臨床検査部の一部として、臨床検査技師が輸血業務全般を担っています。当院は急性期病院であるため、救急搬送患者や緊急手術の輸血にも24時間体制で迅速に対応しています。
血液型検査や交差適合試験などの輸血関連検査と輸血用血液製剤の管理、適正輸血の推進、輸血副作用に対する迅速な対応など輸血に関連した業務全般を管理・運営して安全な輸血医療を実践しています。また、自己血輸血や造血幹細胞移植に伴う末梢血幹細胞保存などに関与しています。
・RhD血液型
・不規則抗体検査
・交差適合試験
・血液製剤の適正な温度での保管管理
・血液製剤の適正使用、副作用管理
手術や、けが、病気などの大量出血により循環血液量が減少した場合や、自分の体内で血液を十分に作ることができなくなった時、必要な血液成分(赤血球・血小板・血漿)を体内に輸注することです。血液の不足による体の障害を防ぐ為に、補充することを目的としています。
輸血には、献血(他人の血液)より得られる血液成分(同種血)を輸血する同種血輸血と、自分の血液を輸血する自己血輸血があります。現在、日赤血による同種血輸血は非常に安全になりましたが、輸血副作用・合併症はゼロではありません。
手術が予定されている患者さんを対象に、手術前に自分の血液をあらかじめ採血しておき、手術中・後に必要量を輸血します。
手術の数週間前から200~400ml/1回/1週間の採血を中央採血室にて採血し、輸血管理室にて使用時まで保管管理します。
自分が供血者である自己血は、副作用の少ない安全な輸血療法です。但し、手術を受けられる全ての患者さんに適用できるわけではなく、患者さんの状態によって異なりますので、医師との相談が必要です。
輸血用血液製剤及びアルブミン、グロブリンなどの血漿分画製剤は、人の血液を原料としており(特定生物由来製品)、まれに免疫反応(蕁麻疹、アナフィラキシー反応、血圧低下、呼吸困難、発熱、GVHDなど)や感染症(B型肝炎、C型肝炎、AIDS、細菌など)を起こすことがあります。
しかし近年、核酸増幅検査(NAT)の導入によりB型、C型肝炎ウイルスやヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染率がかなり低下しています。また、GVHDの防止には放射線照射済み血液を使用しています。
輸血が原因で万一感染症を発症した場合は、「生物由来製品感染等被害救済制度」という法律があり、救済給付を受けることが可能です。その為、輸血3ヶ月後位に感染症検査を受けることも出来ます。
【血液型検査】
血液型は、赤血球上にある抗原によって多くの型に分けられます。そのなかでも輸血の時に最も大切なのは、ABOとRhDの2つの血液型です。
ABO血液型
ABO血液型は、赤血球膜表面上にあるA抗原、B抗原と血清中の坑A、坑Bにより4つの型に分けられます。抗原、抗体の有無(〇、×)により下表のように分類されます。
A抗原 | B抗原 | 坑A | 坑B | 日本人の頻度 | |
A型 | 〇 | × | × | 〇 | 約40% |
B型 | × | 〇 | 〇 | × | 約20% |
O型 | × | × | 〇 | 〇 | 約30% |
AB型 | 〇 | 〇 | × | × | 約10% |
赤血球上のA・B抗原の有無を、凝集反応により行う検査をオモテ検査、血清中の坑A・坑Bの有無を凝集反応により行う検査をウラ検査といい、両方の検査の総合判定により血液型を判定します。
RhD血液型
Rh血液型には、C・c・D・E・eなどの抗原がありますが、通常輸血の際に一番重要なD抗原の検査をします。D抗原の有無により、有る場合はRhD陽性、無い場合はRhD陰性といいます。 日本人のRhD陰性の頻度は、約0.5%です。
【不規則抗体検査】
A型の人は抗B、B型の人は抗A、O型の人は抗A、抗Bをもっています。このように自分に無い赤血球抗原に対して、規則的に存在する抗体が「規則性抗体」です。これに対して、輸血や妊娠(出産)が原因でABO血液型のA及びB抗原以外の赤血球抗原に対して、不規則に産生される抗体が「不規則抗体」です。輸血前にこの抗体の有無を検査します。
抗体を保有している場合の輸血は、その抗体に対する抗原陽性血を輸血すると抗原抗体反応を起こし、凝集や溶血などの副作用を起こしますので、抗原陰性の血液を準備する必要があります。
輸血前に検査することは、安全な輸血や適合血確保に重要な意義をもっています。
【交差適合試験】
輸血する血液と患者さんの血液を反応させ、凝集または溶血がおこらないかを検査します。検査目的として、ABO血液型の適合性再確認と臨床的に問題となる不規則抗体の有無を最終的に確認することにあります。