診療科・専門部・部門 生化学・免疫検査

生化学・免疫検査について

血液や尿等に含まれている成分を調べる検査です。血液の成分には蛋白質、糖、電解質、酵素、ホルモン等がありますが、これらの成分を調べることにより、どの臓器に異常が生じているかを間接的に調べることができます。
測定法は病院や検査所によって様々で、また、年齢や性別、生活環境等で結果が違ってくる検査もあります。患者さんの生活状況やほうほうを正しく理解し、かつ、X線写真、心電図といった他の検査と照合して総合的に判断する時の判断材料の一つです。

1.蛋白

蛋白質は食物として消化、吸収され、体のいろいろな所で、必要な別の蛋白質として作りかえられます。蛋白質を調べることによって、栄養摂取や吸収の状態、蛋白質の合成能力、あるいは作りすぎはないか、尿や便に漏れ出ていないかなどがわかります。

総蛋白質(TP)

体にはたくさんの種類の蛋白質が存在しますが、蛋白質の総量を測ることで蛋白質の合成や使われ方に異常がないか見ます。

アルブミン(Alb)

腸の吸収力や肝臓での合成力が悪くなっていると少なくなります。また、比較的小さな蛋白なので、腎臓が悪くなると尿蛋白として漏れ出たり、下痢のときには便に出てしまう時もあります。

C反応性蛋白(CRP)

炎症や組織の破壊が起こるとすぐに増える蛋白の一つです。回復とともに減少するので、炎症の指標になります。

2.非蛋白窒素

蛋白質以外の窒素化合物の総称です。いろいろな代謝の中間、あるいは最終産物でこれらを測定することにより、いろいろな代謝の状態や、排泄の状態を知ることができます。

尿素窒素(UN)

体内でエネルギーとして使われた蛋白質の老廃物で、腎臓から排泄されます。腎機能が低下すると腎臓から排泄されず、血液中に溜まり高くなります。

クレアチニン(Cr)

筋肉や神経内で生成されほとんどが尿に排泄されます。腎障害の程度によって上昇し、甲状腺機能低下や高度の肝障害では低下します。

尿酸(UA)

食物や体内のプリン体より、肝臓、骨髄、筋肉などで生産され、尿中に排泄されます。排泄の低下、過剰生産により増加します。水に溶けにくく、関節内に沈着して通風結節を形成したりします。

3.酵素

酵素は体の細胞内に存在し、体が正常に機能するように働いています。細胞が異常に増えたり、減ったり、壊れたりすると測定値が変動します。それぞれの臓器で存在する酵素は違うので、ダメージを受けた臓器を推測することができます。

アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)

肝臓、心臓や骨格筋に多く含まれる酵素で、肝臓病や心臓病の指標としてALTとともに測定されます。赤血球に多く含まれ、採血時に赤血球が破壊され溶血を起こすと高く測定されます。

アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)

肝臓に多く含まれる酵素で、肝臓や胆道の病気の有力な指標です。ASTとともに測定され、ASTよりも肝臓に特異的な指標です。

乳酸脱水素酵素(LD)

体内の全ての臓器に分布しており、細胞の変性や壊死を反映するため、スクリーニング検査(一次検査)として重要です。肝疾患、心疾患、筋肉疾患、血液疾患、肺疾患、悪性腫瘍などで増加します。また、赤血球に多く含まれ、採血時に赤血球が破壊され溶血を起こしてしまうと高く測定されます。

アルカリホスファターゼ(ALP)

肝臓、胆管、骨、腸管に多く含まれる酵素です。肝疾患、胆道疾患、骨疾患、甲状腺疾患などで高くなります。また、小児では高く、成人の3~4倍になり、妊娠後期にも高くなります。

y-グルタミルトランスフェラーゼ(yGT)

肝・胆道系のスクリーニング検査として使われ、とくにアルコール性肝障害や常習飲酒者及び薬物性肝障害において上昇します。

アミラーゼ(AMY)

膵臓、唾液腺の細胞に多く含まれ、膵疾患のスクリーニング検査として測定されます。急性耳下腺炎などでも高置に測定されます。

クレアチニン・ホスホキナーゼ(CK)

心筋や骨格筋などに多く含まれ、これらの病気の診断や治療効果、予後の具合を見るために重要です。激しい運動をした後は高値に測定されます。

4.電解質・無機質

電解質とは血中に含まれる無機(有機の反対)塩類でイオンの状態で存在します。陽イオンと陰イオンの2種類があります。イオンとは、たとえば食塩は水に溶かすと陽イオンのナトリウムイオンと陰イオンのクロールイオンに分かれます。

ナトリウム(Na)

血清(血液の液体成分)中の陽イオンの90%を占め、体内の水の調節に重要な動きをします。
体内でのナトリウムの濃度は尿量の調節によって一定に保たれます。腎疾患、下痢や嘔吐では低値に、脱水では高値になります。

カリウム(K)

細胞内に多く存在する陽イオンです。細胞内からの流出、腎臓の働きの程度により変更します。採血中に手に力を入れすぎたり、赤血球が破壊され溶血を起こすと高く測定される場合もあります。

クロール(Cl)

血清(血液の液体成分)中の陰イオンの大半を示しています。食塩として摂取され、尿中に排泄されます。通常、ナトリウムの値と平衡して変化しますが、食塩の摂取量にも影響されます。

鉄(Fe)

赤血球中のヘモグロビン合成に不可欠な成分です。貧血の診断、欠乏や過剰の代謝異常を知ることができます。貧血で低値を示す場合は接種の不足、吸収の不良などが考えられます。

カルシウム(Ca)

ほとんどが骨や歯に含まれています。血液中のカルシウムはわずか1%にすぎませんが生命維持にきわめて重要な働きがあります。各種の内分泌疾患、骨代謝新患で異常を示します。

5.脂質

生体内に存在する水に溶けない有機化合物です。生体内における役割は多様で、炭水化物、蛋白質と並んで生体に不可欠な成分です。

総コレステロール(TC)

細胞膜の構成成分で、ステロイドホルモンを作る材料でもあります。しかし、多すぎると動脈硬化症などの生活習慣病の原因となります。妊娠中は増加し、ヘビースモーカーや大酒家は低下します。

中性脂肪(TG)

食事として摂取された脂肪は皮下脂肪として蓄えられますが、その大部分は中性脂肪です。多くなりすぎると動脈硬化性疾患の原因となります。食事により上昇しますので、空腹時に検査します。

HDL-コレステロール(HDL-C)

動脈硬化を防ぐことから善玉コレステロールといわれています。病気を診断するものではなく、動脈硬化症の危険因子の有無を調べる検査です。

LDL-コレステロール(LDL-C)

動脈硬化症の直接的な危険因子と考えてられており、悪玉コレステロールといわれています。

6.糖質・代謝

体内の細胞はエネルギー源として、主に血液によって運ばれてくるブドウ糖を利用しています。糖質及びその代謝障害を引き起こす代表的な疾患は糖尿病です。

血糖(Glu)

血糖とは血液中のブドウ糖のことです。ブドウ糖は全身でエネルギーとして最も利用されやすい栄養素ですから、しょくじやうんどうによって値は変化します。インスリン(ホルモン)の量の不足や、作用が弱くなると血糖値は上昇し、糖尿病となります。

ヘモグロビンA1c(Hba1c)

赤血球にあるヘモグロビンがブドウ糖と結合したものをヘモグロビン・エー・ワン・シーと言います。血液中のブドウ糖が増加すればするほど高値になります。比較的長期の血糖コントロールの指標として利用されます。

7.その他

ホルモン検査、ウイルスや細菌に感染した時に体内で作られる抗体、がんができた時に血液中などに増える腫瘍マーカーなど、多くの検査があります。

ホルモン

ホルモンが正しく分泌され機能しているか調べる検査です。当院でよく検査される甲状腺ホルモンとしては遊離サイロキシン(F-T4)、遊離トリヨードサイロニン(F-T3)、TSH(甲状腺刺激ホルモン)があります。また、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンは糖尿病や低血糖の時に検査されます。

感染症検査

梅毒、または、肝炎、後天性免疫不全症候群(AIDS)などの原因となるウイルスに感染しているか、あるいは過去に感染したことがあるかを調べることができます。(HBs抗原、HCV抗体など)

腫瘍マーカー

体の中にがんができると、血液や尿の中に増える物質があります。これらの物質を腫瘍マーカーといい、血液にどの程度存在するかを調べることによって、がんの可能性を探ることができます。

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