地域医療の明日をみつめる 厚生連高岡病院ホームページにようこそ。

厚生連高岡病院

〒933-8555 富山県高岡市永楽町5番10号
TEL 0766-21-3930(代) FAX 0766-24-9509
文字サイズ変更
文字サイズを小さく
文字サイズを大きく
厚生連高岡病院トップページヘ
厚生連高岡病院のアクセス情報へ

当院のご案内 厚生連高岡病院のご紹介

医療倫理に関する指針

1.厚生連高岡病院倫理綱領

我々は人格の陶冶に努め、社会正義を重んじ、より良い医療を追及する組織を目指し、病院医療を通じて、日本が生きがいのある健全な社会になるよう病院人として実行すべき規範を定める。

  1. 1.我々は知識と技術の習得に励み、温かな心を持って医療の質の向上に努める。
  2. 2.我々は患者の権利と自律性を尊重し、患者の視点に立った医療を行う。また、権利に
  は義務が伴うこと並びに医療の不確実性について患者に理解を求める。
  3. 3.我々は診療情報を適正に記録・管理し、開示請求には原則として応じる。
  4. 4.我々は地域の医療・保健・介護・福祉を包括的に推進するとともに、関係諸機関・施設等との連携・協力関係を構築する。
  5. 5.我々は人の自然な死に思いをいたし、緩和医療を推進し、誰もが受容しうる人生の最終段階における医療を目指す。

日本病院会の倫理綱領をもって厚生連高岡病院の倫理綱領とする。

2.厚生連高岡病院臨床倫理方針

  1. 1.患者さんの人権と自己決定権を尊重し、十分なインフォームド・コンセントにより医学的適応に基づいた適切な医療を行います。

    予定する検査や治療については、患者さんの理解力に応じて、適切な方法と内容で十分な情報を提供し、自発的な同意を受けて医療を提供します。その際、患者さんの病名・病態、予定している治療(検査)目的、内容、リスク、代替可能な治療(検査)法、何もしない場合に考えられる結果を説明します。また、治療に関しては、要望があれば主治医の立場から選択肢に優位順位をつけて説明します。また、説明は一度ではなく、必要があれば何度も繰り返して行います。

  2. 2.生命倫理に関する関係法規を遵守し、診療ガイドラインを尊重した医療を提供します。
    1. 人工妊娠中絶に際しては。「母体保護法」を遵守します。
    2. 胎児診断、人工授精、体外受精に関しては日本産婦人科学会の見解を遵守します。
    3. 脳死判定、臓器移植に際しては、各ガイドラインに基づいた院内規定により適切に行います。
    4. 人生の最終段階に於ける医療に関しては、当院の人生の最終段階に於ける医療ガイドラインに基づき適切に対応します。
    5. 宗教上の理由による輸血拒否の患者さんには「宗教的輸血拒否に関するガイドライン」及び当院の輸血療法マニュアルに基づき、適切に対応します。
    6. 尊厳死、延命治療など生命の尊厳に関する問題、医療行為の妥当性に関する問題については、倫理委員会において審議を行い、「倫理的な課題についての具体的な対応指針」に基づき治療方針を決定します。
  3. 3.臨床研究は被験者の人間の尊厳及び人権を守り、「厚生連高岡病院臨床研究に関する倫理マニュアル」に基づいて行います。

3.倫理的な課題についての具体的対応手順

  1. 1.臨床の様々な場面で生じる個別具体的な倫理的課題についての対応
    1. まずは、患者がかかえる種々の倫理的課題(臓器移植等の先進医療に関する事、人生の最終段階に於ける医療に関する事、治療方針に関する事、インフォームド・コンセントに関する事、ケアの提供に関する事、患者の権利と尊厳に関する事、守秘義務に関する事、安全確保と拘束に関する事、医療従事者の態度や発言に関する事、家族支援に関する事、等)を把握する。
    2. 次に、把握した倫理的課題について「多職種の医療チーム」で解決策を検討する。
    3. 医療チームで解決できない場合は、「倫理コンサルティングチーム」にて検討する。
    4. 倫理コンサルティングチームでの解決困難事例については「倫理委員会」で外部委員(法律の専門家、倫理・哲学の専門家)の意見を伺い、広い視野で検討します。(別添チャート資料手順により進める)

    ※なお、上記の経過は、カンファレンス(倫理)に記載する。

  2. 2.新たな診療・治療方法や技術を導入する際に生じる倫理的課題についての対応

    保険適用が認められているが当院では新規となる治療法を導入する場合は、まず当該部署で倫理面と医療安全面から十分に検討し、研修受講などによって技術修練を行う。その上で、「倫理委員会」に諮問し、承諾された場合は、病院長が当該治療法の実施を許可する。導入後、一定症例数あるいは一定の期間に達した時点で(症例数が少ない場合は一症例ごとに)、当該治療法の妥当性を検証する。

  3. エビデンスが十分でない新規治療の導入時における倫理的課題についての対応

    保険適用が認められていないが患者に有益と考えられる治療法を当院で新規に導入する場合は、まず当該部署で倫理面と医療安全面から十分に検討し、必要であれば研修受講などによって技術修練を行う。その上で、ヘルシンキ宣言を尊重し、文部科学省・厚生労働省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」並びに「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を順守する臨床研究として「臨床研究倫理審査委員会」に諮問し、承諾が得られれば、病院長が当該治療法の実施を許可する。導入後、承諾時にあらかじめ定めた治療数に達した時点で、当該治療法の妥当性を「臨床研究倫理審査委員会」で検証する。

  4. 4.臨床研究(治療以外)に関する倫理的課題についての対応

    当院で臨床研究(治療以外)を行う場合は、まず当該部署で倫理面と医療安全面から十分に検討し、その上でヘルシンキ宣言を尊重し、文部科学省・厚生労働省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」並びに「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を順守する臨床研究として「臨床研究倫理審査委員会」に諮問し、承諾が得られれば、病院長が当該臨床研究の実施を許可する。導入後、承諾時にあらかじめ定めた症例数に達した時点で、当該臨床研究の妥当性を「臨床研究倫理審査委員会」で検証する。

4.倫理的な課題についての具体的対応指針例

  1. 1.自己判断不能患者に対して
    • 意識不明や判断能力を欠いた成人において、緊急事態で生命に問題がある場合でかつ家族等に連絡がつかない場合は代理人に対するICを行わないで、医療者は医療チームの合意を持って緊急治療をおこなう。ここでいう代理人は、患者さんの価値観、人生観を十分に理解し、患者さんの立場に立って判断できる場合にのみ代理人となりうるという原則に従います。時間的余裕があれば代理人にICを行い、治療に必要な判断と決定を受けなければならない。その際、患者の事前指示書や医療上の委任状などがあればそれに従う。
    • 15歳未満の子供の場合、医療者は親権者にICを行い承諾を得る。しかし、7歳以上の子供本人にも、できるだけ理解できるよう説明し賛意を得ることが望ましい。15歳以上の子供は、自分の身分上の変更を行い得る能力があると法律的(養子縁組民法797条、遺言民法961条)に考えられており医療上の自己決定権を持つと考え対処する。
  2. 2.心肺蘇生不要指示(DNAR; Do Not Attempt Resuscitation)

    癌の末期、老衰、救命不能な患者、または意識回復が見込めない患者やその家族に対して十分な説明をしたうえで、心肺蘇生を行わない事に同意された場合、主治医は電子カルテの患者掲示画面「重要事項」に決定日を記載し他の医療関係者に周知する。

  3. 3.治療行為の拒否について

    検査・治療・輸血・入院の必要性と実施しない場合の不利益について患者に十分な説明を行っても、患者が治療行為を拒否した場合は、患者が拒否できる権利を認めて患者の意見を尊重する。その際にはカルテに説明内容と患者の決定内容を記載する。

  4. 4.行動制限について

    行動制限は人間としての尊厳を損なう危険性があり、法律でも禁止されていることから、下記に示す例外事項3条件を満たさない場合には行いません。しかし、患者さんの生命に危険が及ぶ場合など緊急やむを得ない場合(一時的に発生する突発事態)に限り、患者または家族の同意を得た後に、必要最小限の行動制限を行います。行動制限が行われる場合には、 毎日チームで協議し不要となった場合は速やかに解除します。

    ≪例外事項3条件≫

    1. 切迫性(抑制しなければ生命にかかわる可能性がある)
    2. 非代替性(他に、代わる手段がない)
    3. 一時性(必要がなくなれば、速やかに解除する)
  5. 5.予後不良の告知について

    患者さん本人の知る権利を尊重し、本人への告知を優先します。原則として、すべての患者さんに、「がんなどの予後不良な疾患であっても告知を望まれるか」、外来受診時や入院時に希望をお伺いします。患者さんご本人が告知を希望されない場合には、患者さんから指名された代理人にお話しします。

  6. 6.終末期における意思決定

    終末期の判定は、複数の医師で検討し、慎重に判断します。 日本臨床倫理学会から提案された「医療処置(蘇生処置を含む)に関する医師による指示書」に従って患者さんの終末期の意思を確認します。

  7. 7.退院の拒否および強制退院について

    一般的に医師が入院治療を必要としない旨の診断をなし、診断に基づき患者に対し退院すべき旨の意思表示があったときは、特段の事由が認められない限り入院診療契約は終了すると考えられているので、医師は退院を拒否する患者および家族に対しても退院の方針を説明する。なお、患者の問題行動が病院の秩序を著しく乱したり、患者が医師・看護師の指示に従わず、医療業務が平穏に行われなかったり、著しく支障を及ぼすと考えられる場合や威力業務妨害や脅迫、暴行などの犯罪行為にかかると思われる場合は、診療を拒否しうる「正当な理由」になると考えられ院長が強制退院を勧告できる。

  8. 8.暴力行為等迷惑行為について

    暴力行為等迷惑行為があった場合は、防犯管理マニュアルにて対処する。必要なら警察に連絡をする。

5.適切な意思決定に関する指針

  1. 1.基本方針

    人生の最終段階を迎えた本人および家族等を支えることを目標とし、医師をはじめとする医療・ケアチームが、本人・家族等の意見を繰り返し聴きながら、本人の尊厳を追求し、自分らしく最期まで生きぬき、より良い最期を迎えられるよう、人生の最終段階における最善の医療とケアを作り上げるプロセスを示すために、この指針を策定する。

  2. 2.人生の最終段階における医療及びケアの在り方
    1. 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて 医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な基本方針である。また、本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、本人との話し合いが繰り返し行われることを目標とする。さらに、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、 家族等の信頼できる者も含めて、本人との話し合いが繰り返し行われることも目標とする。この話し合いに先立ち、本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておくことも望まれる。
    2. 人生の最終段階における医療・ケアについて、医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止等は、医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断する。
    3. 医療・ケアチームにより、可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、本人・家族等の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行う。必要に応じて当院の緩和ケアマニュアルを参照し、医療・ケアチームでの対処が困難な場合には、緩和ケアチームにコンサルトする。
    4. 生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は、行わない。
  3. 3.人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続

    人生の最終段階における医療・ケアの方針決定は次によるものとする。

    (1) 本人の意思の確認ができる場合

    1. 方針の決定は、本人の状態に応じた専門的な医学的検討を経て、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明を行う。そのうえで、本人と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを踏まえた本人による意思決定を基本とし、多専門職種から構成される医療・ケアチームとして方針の決定を行う。
    2. 時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて本人の意思が変化しうるものであることから、医療・ケアチームにより、適切な情報の提供と説明がなされ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるような支援が行われることを目標とする。この際、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等も含めて話し合いが繰り返し行われることも目標とする。
    3. このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめ、電子カルテに記録を残す。文書については、医療従事者からの押し付けにならないように、特定のフォーマットを規定しない。

    (2)本人の意思の確認ができない場合

    本人の意思確認ができない場合には、次のような手順により、医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要がある。

    1. 家族等が本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
    2. 家族等が本人の意思を推定できない場合には、本人にとって何が最前であるかについて、本人に代わる者として家族等と十分に話し合い、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行う。
    3. 家族等がいない場合及び家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、 本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
    4. このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめ、電子カルテに記録を残す。文書については、医療従事者からの押し付けにならないように、特定のフォーマットを規定しない。

    (3)認知症などで自らが意思決定をすることが困難な場合

    認知症や知的障害等で、自らが意思決定することが困難な場合は、厚生労働省作成の「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定ガイドライン」を参考に、できる限り本人の意思を尊重し、反映しながら意思決定を支援する。

    意思決定能力の評価については、当院緩和ケアマニュアル(I-19)も参照する。

    (4)身寄りがない患者の場合

    身寄りがない患者における医療・ケアの方針についての決定プロセスは、本人の判断能力の程度や入院費用等の資力の有無、信頼できる関係者の有無などにより状況が異なる。介護・福祉サービスや行政のかかわりなどを利用して、ご本人の意思を尊重し、厚生労働省の「身寄りがない人の入院及び医療に係る、意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を参照し、支援する。

    (5)複数の専門家からなる話し合いの場の設置

    上記(1)から(4)の場合において、医療・ケアの方針の決定に際し、

    • 医療・ケアチームの中で心身の状態等により医療・ケアの内容の決定が困難な場合
    • 本人と医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合
    • 家族等の中で意見がまとまらない場合や、医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合

    等については、医療・ケアチームの申し入れにより、臨床倫理コンサルテーションチームに相談を行い、必要な場合には、倫理委員会で医療倫理に精通した専門家を含めた検討を行って、方針等についての助言を得る。

2022年4月1日 第1版策定
厚生連高岡病院

<引用・参考文献>

  1. 1.人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン 厚生労働省 改訂 2018年3月
  2. 2.認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定ガイドライン 厚生労働省 2018年6月
  3. 3.身寄りがない人の入院及び医療に係る、意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン 2019年5月
  4. 4.当院緩和ケアマニュアル Ⅰ はじめに 8.患者・家族の意思を尊重した意思決定支援、9.診断・治療期からの支援、10.アドバンス・ケア・プランニング p I-18 – I-26

(平成27年4月1日 作成)

(平成28年8月22日 改訂)

(令和2年9月10日 改訂)

(令和4年4月1日 改訂)