本当は怖くない癌の放射線治療 シリーズ①
癌の治療には昨年度ノーベル賞受賞の対象となって一躍脚光をあびた癌の免疫チェックポイント阻害薬の開発など種々のものが発達してきていますが、基本的には手術、抗がん剤治療、放射線治療が癌の3大治療とされており、癌の治療はこれら治療法を組み合わせた、あるいは単独で行われるのが一般的です。一方、患者さんが癌の治療として思いつくのはまずは手術でしょうか。また、抗がん剤治療の認知度も高く、患者さんにとっては癌の治療は手術を中心に必要に応じて抗がん剤治療を行うというのが認識ではないでしょうか。ただ3大治療の一つとはいいながら、患者さんにとっては放射線治療が最初の選択肢にはなりえません。これは放射線治療がすべての施設で受けられる訳ではないため、最初に患者さんを診た内科医あるいは外科医が放射線治療を俎上に上げないことが一つの原因ではありますが、患者さんにとって認知度が非常に低いためか、何をするのか分からなくて怖い、放射線治療で治るのかというイメージがあるように思います。また放射線治療自体が地味で、神の手と言われるような世間に注目されるようなスーパードクターがいないのも一つの要因かと思います。
しかし近年の放射線治療の進歩は極めて顕著で、小さい腫瘍に対する定位放射線治療や強度変調照射という最先端技術により過去治療出来なかった腫瘍でも治療出来るようになり、画像誘導放射線治療という手法によりミリ単位の誤差で正確に照射出来る時代になっています。厚生連高岡病院では早くから放射線治療に取り組み、現在の最先端放射線治療を提供出来る呉西地区唯一の病院で、以前の放射線治療とは比較にならない副作用の少ない治療を提供しています。これらの最先端技術を患者さんに理解頂くことは非常に難しいのですが、現在非常に有用な治療になっています。
現在日本では二人に一人が癌になります。また手術等他の治療が困難な高齢者の癌患者も増えています。このような患者さんにも放射線治療は十分施行可能で、決して怖くない治療であることを患者さんに能動的に捉えて頂けると良いかなと思います。
放射線治療科 診療部長
髙仲 強