子どもの発達について シリーズ④ 「発達障害についてーその3」
自閉スペクトラム症 /自閉症スペクトラム障害
自閉スペクトラム症は、「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心・やり方・ペースの維持を最優先させたいという強いこだわり」といった特徴をもつ発達障害の一つです。子どもの約20~50人に1人、男児が女児の約2~4倍多く、生まれつきの脳機能の異常によるものと言われています。人に対する関心が薄く、相手の気持ちや状況などあいまいなことを理解するのが苦手で、事実や理屈に基づいた行動をとりやすいため、周りの人から誤解されがちです。乳幼児期には、あやしても視線が合わない、人見知りや親の後追いをしない、言葉をなかなか話さないことで見つかります。その後、言葉を話すようになっても台詞を棒読みするような話し方、会話にならない、大人びた言葉遣い、空気が読めない、思ったことをはっきり言うので相手を不愉快にする、自分の好きな話題では饒舌になりすぎる、面接が苦手、融通が利かない、などが目立ちます。ルール厳守、好き嫌いが極端、特定の物事への興味や情熱が非常に強く没頭する、などはこだわりです。また、感覚の過敏・鈍感さ、運動のぎこちなさを伴うことがあります。これらの特性のため、多数派に都合よくできている社会で生きづらく、失敗体験を重ねるうちに自尊心が低下し、身体症状、精神症状、不登校やひきこもり、暴言・暴力・自傷行為など二次的な問題に発展する危険性が高くなります。早めに見つけ、長期的な見通しを立て、各自に適した療育(治療教育)を受けることが治療の基本です。できることを着実にこなす「自律スキル」と、わからないことは人に相談し社会のルールを守る「社会スキル」を取得することが大切です。薬物療法については医療機関に相談してください。
小児科 診療部長
窪田 博道