「鏡視下手術の進歩」シリーズ①
近年のテレビやビデオなど映像機器の画質には目をみはるものがありますが、医療の領域にも同じ波が押し寄せています。厚生連高岡病院外科では2016年の手術件数は917件でしたが、このうち508件が体へのダメージが少ない鏡視下手術(モニター画面を見ながら行う小さなキズの手術)でした。1992年に胆嚢摘出術、2003年に大腸癌、2005年には胃癌に対する腹腔鏡手術に着手し、現在では急性虫垂炎や鼠径ヘルニアはもちろん、急性腹膜炎・腸閉塞や肝臓/膵臓/脾臓手術の一部、食道手術(食道裂孔ヘルニア、アカラシア、食道癌の一部)、骨盤内臓全摘術を含む多臓器合併切除など、より難易度の高い術式へ適応を広げつつあります。
これを可能にしているのが手術機器の進歩で、特に画像技術の向上によるところが大きいように思います。最初はSD画質(昔のアナログ程度)のモニターでした。当時はこんなものだと思っていましたが、今になって映像を見直すと昭和のテレビ番組の様な粗さです。その後HD画質(現行のデジタルハイビジョン)になり細部までよく見えるようになったと感激したのも束の間、昨年導入された4Kの鏡視下手術システムは圧巻でした。微細な構造を拡大視することで一層精細な手術ができるようになったと実感しています。
将来は3Dや8Kといったさらなる性能向上に加え、ロボット手術なども徐々に普及してゆくことでしょう。我々外科医の技術も遅れを取らぬようにせねばなりません。当科では消化器外科医の多くが目指す日本内視鏡外科学会の技術認定医(手術ビデオで審査される合格率30%前後の難関、2017年現在で全国に1700人余、富山県に12人)を各グループのチーフを含めて5人が取得しています。今後も先進的な技術導入を怠らずに研鑽を重ね、責務を果たしてゆけるように努めてまいります。
<本シリーズで各臓器/領域ごとの鏡視下手術についてもう少し詳しくご紹介いたします。次回は大腸癌の予定です。>