「鏡視下手術の進歩」シリーズ② 大腸がんにおける腹腔鏡下手術
近年、大腸がんの罹患率・死亡率は増加傾向にあり、一般的には開腹手術が行われますが、日本でも四半世紀前より腹腔鏡下手術が導入され増加傾向にあります。腹腔鏡下手術は、おなかの中に二酸化炭素を入れて膨らませ、臍から高性能カメラ(腹腔鏡)を挿入し、おなかの中をモニターに映し出し、5mmの鉗子でリンパ節郭清や大腸切除・吻合を行う手術です。開腹手術では20cm前後の切開創が必要ですが、腹腔鏡下手術では3~5cm程度の切開創で済むため、患者さんにもたらす効果は、切開創の縮小化→手術直後の痛みの軽減→早期離床→排ガス・排便の早期化→早期の食事開始→早期退院・社会復帰となり、「低侵襲手術」と言われています。腹腔鏡下手術の利点は低侵襲性だけではなく、高性能ハイビジョンの腹腔鏡による拡大視効果にて、従来の開腹手術では見えにくかった部位や細かい血管・神経までよく見え、がんの根治性を保ちながら機能を温存する繊細で質の高い手術が可能となります。当院では、昨年更なる安全性と根治性の向上を期待しICG(インドシアニングリーン)蛍光対応4K内視鏡システムが導入されました。ICGを腫瘍近くに注入しリンパの流れを確認することで、より確実なリンパ節郭清が行え、またICGを血管に投与し腸管吻合部の血流を確認することで、術後の合併症を減らせることが期待されます。数年前までは、肛門に近い直腸がんに対しては肛門を残せないとされた症例でも、現在では条件を満たせば肛門温存手術が可能となり、当院では腹腔鏡下での肛門温存手術に積極的に取り組んでいます。当院の大腸がん手術の98%以上に腹腔鏡下手術を行っています。大腸がん治療や腹腔鏡下手術に関してのご相談をいつでもお待ちしております。
消化器外科 診療部長
小竹 優範