人間関係は難しい -理想と現実の狭間で生きる私たちー
「皆で仲良く」というのは、理想ではあるが幻想である。
それは歴史が証明している。
人類史は戦争の歴史といっていいくらい、古今を通じ地球のどこかで争いがなされている。
それは国と国との間でもそうだが、身近な職場、家庭においても、
常にいがみあい、あの人がいるから、こいつがいなければと憎しみ合っているのが実情ではなかろうか。
「過去にも、今にも、未来にも
皆にて謗る人もなく
皆にて褒むる人もなし」
(経典)
あのお釈迦様ですら、当時インドの人の3分の1は非難し攻撃したというのだ。
ましてや欠点だらけの我々である。
すべての人から好かれるなど、到底実現不能な幻想に違いない。
かなわぬ幻想を追い求めるより、手の届く現実こそ直視すべきであり、
人からあれこれ言われたとて、必要以上に落ち込んだり過剰に反応したりするのは道理に合わぬ徒労といってよかろう。
では、分かり合えないからといって、好きになれない相手を憎んで遠ざけ、排斥していていいのか。
もちろん答えは「否」である。
折合いの悪い人は、別の視点で観ると、欠点を指摘してくれる好敵手とも言える。
周り中がイエスマンだったら、気分はいいかもしれないが、順境ばかりではきっとどこかで足をすくわれる。
人間関係は難しいが、適度な苦味が料理の旨さを引き立てるように、人生を味付けるスパイスと心得て、嫌いな人とも向き合っていきたいものである。
(消化器内科 本藤 有智)