雑談の効用
医局には談話スペースがあり、私はそこで昼食をいただいています。
昼食仲間(?)に循環器内科の○先生がいて、いつも愛妻弁当を広げているのですが、
ある昼休み、担当患者さんで微熱とCRP(炎症反応)高値が続く方があり、何気なくそのことを話題にしました。
○先生いわく、
「IE(感染性心内膜炎)は除外したいところだから、血培(血液培養)はとっておいたら?」
とのこと。
その患者さんはすごく元気で重症感がなく、IEは疑っていなかったのですが、念のため血液培養を採取してから退院としました。
それが返って来たのです。血培陽性の報告が。
急ぎ、循環器内科に連絡をとり、感染性心内膜炎の診断のもと治療が開始され事なきを得ました。
実は、その患者さんは、がんの手術を控えており、
精査のための入院だったのです。
もちろん手術は延期となりました。
感染に気づくことなく、そのまま手術を受けていたら…
外科医と二人、危なかった~と胸をなでおろしていました。
上司からは、
「本藤、よく気づいたな」と、賞賛をもらいましたが、
○先生の発言がなければ診断にはたどりつけなかったでしょう。
雑談には、危険を未然に防ぐすごい力があります。
業務に無関係な「私語」は厳に慎むべきと思いますが、
風通しのよい「雑談」は、よりよい病院づくりの一助となるかもしれません。
(消化器内科 本藤 有智)