初めての論文作成に思う 前編
医師となって8年、ついに私にも論文を書く機会がやってきました。
臨床医の仕事には大きく分けて2つあります。
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1.目の前の患者さんを身につけた医療知識や技術で助ける<診療>
2.診療を通して得られた知見を広く世の中に還元する<教育・研究・学会・論文>
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1は日常よく目にする医師の姿です。患者さんを診察し、診断し、治療する。
自分の診療によって患者さんが治っていく姿は、何にも代えがたい医師の歓びであります。
しかし、驚異的な診療技術を身につけて稀代の名医となったとしても、その恩恵を受けられる患者数には限りがあります。
1人の診療に10分の時間を掛けるとして、1日10時間、1年300日、一生50年間働くとすれば延べ90万人の患者を診られます。
多いと思うかもしれませんが、日本の人口の1%未満、世界70億においては無視し得るほど少ない数です。
そこで、診療で得た知見を広く共有し、世界の医師が実践したらどうでしょうか。
その知見は、見たこともない世界中の何億人もの患者を救い、今後も救い続けるでしょう。
共有の仕方は種々にあります。
後進の育成に心をかける<教育>
未だ明らかでない病態、治療を検討する<研究>
診療経験、研究成果を多くの医師が集まる舞台で発表する<学会>
後世に向けて論文とする<論文>
など、いずれも素晴らしい仕事ですが、中でも最後の論文作成には莫大な労力を必要とします。
医師川柳で見つけた
「論文化 書くぞ書くぞと もう一年」
は、執筆が進まない医師の悲哀をよく表していて笑ってしまいました。
後編では論文作成の一部始終を紹介し、その大変さとやりがいを伝えたいと思います。
(消化器内科 本藤 有智)