教育は回収を期待しない投資
かつて大学病院の研修医だった頃、指導医の勧めで、仲間と協力し、学生相手に輸液の講義をした。
それがとても好評で自分も勉強になったのをよく覚えている。
時を経て、今度は私が研修医を指導する立場になった。
往時の記憶をたどり、担当の研修医に、実習中の医学生へ 輸液のレクチャーをするよう勧めてみた。
果たして、生き生きとした彼女の講義は予想を遥かに上回る出来栄えで大いに感動した。
小学校教員であった母は「教育は”回収を期待しない投資”だ」とよく言っていた。
教えるのは大変で、費やす時間や労力は確実に業務を圧迫する。
また、己の配慮や力不足を知らされ落ち込むことばかりだ。
しかし、うまく学ぶ環境が整うと、どんな人も目を輝かせ目覚ましい成長を遂げる。
その姿を見るたびに、心の底から喜びが湧き上がり、
これだから教育はやめられない、といつも思う。
今日も自分を叱咤して、研修医・学生指導に熱をあげる毎日である。
(消化器内科 本藤 有智)