中川俊一先生による研修医スキルアップセミナー
今回は「悪い知らせの伝え方 ~臨床現場におけるコミュニケーション~」という内容でコロンビア大学緩和医療科の中川俊一先生のレクチャーを受講させて頂きました。医師や看護師以外にも他職種の医療関係者が出席していました。
私は研修医という立場であり、実際、患者さんに「癌が見つかった」、「治療がうまくいかなかった」といういわゆる「悪い知らせ」を伝えた経験はまだありません。しかし、研修医になってから何度か上級医が患者さんやその家族らに「悪い知らせ」を説明する場面に立ち会ったことはあります。「きちんと説明されている」と感じたこともありましたが、「そんな大事な情報をさらっと言って良いのか」と疑問を抱いたこともありました。
今回のレクチャーでは座る位置、話し方といった基礎的なものから「白い巨塔」という少し昔の医療ドラマをモチーフに実践的なものまで幅広い内容を、スマホやタブレットを用いた参加形式で学びました。匿名であったため自分の意見を投票しやすく、また参加者が多く様々な方々の意見も知ることができました。
印象的だったことは、「悪い知らせ」を伝える際に最も大事なことは準備であるとおっしゃったことです。ICを何回も何回もされてきた中川先生でさえ、未だに準備が不足していた時はやはりうまくいかず、病状や予後、予想される質問とその返答など様々な情報を事前にしっかりと準備していたときはお互いが納得のいくICとなる。日々、失敗がありそれを振り返って反省し次に活かしていると話されました。いわゆるテクニックだとか付け焼刃的なものではなく、1つの症例に対して真摯に取り組む姿勢は何十年たっても変わらないということ。医師も患者さんも人間であるため、100%正解の伝え方は存在しないけれど、事実をわかりやすく丁寧に伝える努力をすること、そのためにはまず準備を怠ってはいけないと思いました。また、じっくりと患者さん家族とのIC時間をとることや看護師らと情報共有を行っていくことも困難ではありますが、大変重要だと再認識させられました。
90分という比較的短い時間でしたが、アメリカと日本で時差があるにも関わらず、密度の濃い実りあるレクチャーを受講させていただき、是非、今後の現場で活かしていきたいスキルを学ばせていただきました。
最後になりましたが、お忙しい中、ZOOMでレクチャーをしてくださった中川俊一先生はじめ企画していただいた方々に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。