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厚生連高岡病院

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厚生連高岡病院 卒後臨床研修医(初期研修)

卒後臨床研修(初期研修)新着情報

寺澤秀一先生による臨床教育レクチャー

9月23日に研修医のバイブルとも言える赤本、青本を書かれたことでも知られる福井大学 救急部総合診療部 教授の寺澤先生が当院を訪れ講義していただきました。寺澤先生は当院院長の北川先生の金沢大学の同級生だったそうでそのご縁もあって当院に度々講義していただいています。

td-1僕自身、寺澤先生の講義は毎回とても楽しく聞かせていただいており、1年目の僕はこれで3度目の受講になります。
福井大学の救急部総合診療部では週に1度全員で自分が「ヒヤッとした症例」について共有する機会があり、その症例について寺澤先生が講義してくださるそうです。今回の寺澤先生の講義も同様の形式で行いました。今回、総合診療科で研修中の研修医1年目のS先生が立候補して症例発表をしてくれました。S先生が発表した症例は「アルコール中毒」の症例でした。ここでは簡単にその講義の内容について紹介させていただきます。

S先生の発表症例は40歳男性発熱、振戦、歩行障害を主訴に当院紹介となった患者さんでした。患者さんは普段飲酒量はビール1本ほどでしたが、2週間前くらいから急激に飲酒量が増えてきていたという病歴のある患者さんでした。患者さんは酒を飲み始めてから日本酒と牛乳しか摂取していませんでしたが、お酒も喉を通らなくなってしまったため来院したそうです。 
今回、S先生はその時点でWernicke症候群しか鑑別に挙げませんでした。これが彼の「ヒヤッと」で、患者さんは軽度の意識障害があり脳炎や髄膜炎についても鑑別に挙げなければなりませんでした。
寺澤先生の講義は僕ら研修医が普段あまり意識したことのない紹介状の読み方、書き方から始まりました。紹介状から患者さんの特徴や背景を読み解いたり、また実際自分たちが紹介状を書くことになったら注意しなければならない点など教えていただきました。例えば、「上気道炎」という言葉は注意して使わなければならない言葉の代表です。「上気道炎」などと普段何気なく使ってしまいそうな言葉ですが、発熱、鼻水、咽頭痛や咳嗽など咽頭症状のうち2つを満たすことが必要です。今まであまり意識せずに使っていた言葉だったため目からウロコでした。

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講義はS先生が症例報告をすすめていき、合間合間に寺澤先生から意識障害の鑑別やアルコール性疾患の鑑別などについてもミニレクチャーを入れていただく形で講義をすすめていきました。印象に残ったことがいくつもありましたが、特に印象に残ったものとして例えば、意識障害の患者さんを見たとき鑑別に有用な所見について教えていただきました。血圧は鑑別のために重要な所見になりうるそうで、血圧が高いほど脳神経系に障害がある患者数が多かったことが近年報告されているそうです。これは寺澤先生が経験則を基に赤本や青本に書いたのを読んだ別の先生が論文に書いて報告したそうです。この他にも寺澤先生には長年の経験則から導きだした幾つかの法則があるらしく、例えば「パチンコから救急搬送される若者はてんかんが多いが老人は重篤な疾患患者が多い」というのも寺澤先生の法則だそうです。また、寺澤先生は「お酒については嘘をつく患者さんが多く患者さんの申告の2倍量は飲んだと考えておくように」ともおっしゃっていました。本症例についても2週間前からでなくそれまでも相当量飲んでいたのではないかと推察されていたようです。

結論として本症例はwernicke脳症でビタミンと糖の補充で軽快していったようです。一見すると単純に見える症例ですが、見逃しがないように診療していくためには診療過程が大事でしっかりと鑑別を挙げることが必要だと寺澤先生のお話を聞いて勉強になりました。
寺澤先生は僕らが楽しく講義をうけられるように笑いのある講義をしてくださいました。いつも楽しく聞いていた寺澤先生の講義でしたが、今回も気づけばあっという間に終了時刻でした。普段診療していてすぐに活かせそうな知識についても多く教えていただいたので今後の診療で使っていけそうです。

(研修医K)