嶋崎鉄兵先生による臨床教育レクチャー
医師10年 RUSH大学 感染症科フェロー、嶋崎鉄兵先生をお招きし、レクチャーをして頂きました。
将来働く病院で、感染症専門医がいるとは限りません。
目の前の感染症の患者さんに、抗菌薬は何を使えばいいのか。
どう対処したらよいのか。基本的な考え方を楽しく教えていただきました。
1.抗菌薬の話
まず、ぶどうの絵に手足を描かれてのQuestion。
「コイツが店で暴れていて店員のおばちゃんが『何とかして』と言ってるわけです。さあ、何で戦う?」
何の話が始まったのかと思えば、感染症に対しβラクタム系のはじまりから、如何にカバーする菌を広げていったかという、歴史の話なのに、なぜか聞いていてワクワクし、続きが気になる、不思議な時間。
抗菌薬の本を見ても今ひとつわからないのが、「これって何に効くの?」
田の字のような4つのボックスを描く
上段右からグラム陽性球菌(GPC)、グラム陰性桿菌(GNR)、嫌気性菌(嫌)、緑膿菌(緑)をboxに「基本的にカバー」を全塗り、「一部カバー」を半塗りで一目瞭然に。
これをβラクタム系の歴史を軸に、嶋崎先生の話術によって抗菌スペクトラムが、あら不思議!!すっと頭に入ってくる!!これならおさらいもしやすいです。
2.血液培養と【Assessment】
自動指示「38度以上時、血液培養・アセトアミノフェン」は問題か?
実はこれを感染症医がみたら、自動指示「心室細動時、除細動3回」”おいおい!医者をよばんのかい!”って話と同じくらい突っ込みどころ満載の指示だそうです。
どちらも、大事な【Assessment】が抜けています。どんな患者の、どの臓器の、どんな微生物の感染症??
そのAssessmentを唯一変え得る検査が血液培養。
血液培養はいつとるのか?38度以上?WBCの値が高いとき? でも重症だと熱も下がり、WBCも下がります。
正解は、菌血症を疑った時・・・といってもどんなときに疑うのか?大事なポイントを教えて頂きました。
3.症例2例。
1例目:高齢者、発熱・背部痛。脊柱叩打痛なく、体幹部CTでは胸水以外明らかな所見なし。
肺炎・胸膜炎としてABPC/SBTで治療されていたが軽快なし。
→血液培養からS.aureus検出。
MRI施行し、化膿性脊椎炎の診断に至った1例。血液培養で如何にアセスメントが変わりうるかを学びました。
2例目:インドネシア在住の若年男性、喘息以外の既往なく、常用薬なし。性パートナーは妻のみ。シカゴに渡航後、翌日から湿性咳嗽・鼻閉・発熱あり、他院でオーグメンチンを処方されたが軽快なし。
渡航3日目から顔面皮疹が出現、4日目に咳嗽増悪、体幹部まで皮疹拡大。水様性下痢出現。
→海外渡航者の、皮疹を伴う発熱の鑑別を学びました。
ウィルス・細菌などカテゴリのごとに一つ一つ挙げていけばよく、上気道症状が先行するなどのKeyとなる特徴を捉えるのが大事と教えて頂きました。本例は成人麻疹の一例。勿論、皮疹の写真は癒合性の皮疹でした。
あっという間に3時間。時間の経過を感じない、とても楽しいレクチャーでした。
(研修医)