当院における周術期口腔機能管理
(医局研究会 2019.06)
歯科口腔外科 山田浩太
医局研究会で「当院における周術期口腔機能管理」と題して、実際に当院で行っている内容および当科歯科医師がどういったことに気にかけて対応しているのかについてご紹介いたしました。概要について報告いたします。
・周術期口腔機能管理とは?
周術期口腔機能管理とは、簡易的にまとめると、化学療法や手術が決まった患者さんに対し、治療前後の口腔内管理、サポートを行うことです。数年前に保険算定できるようになってから、全国の病院歯科で数多く導入されています。悪性腫瘍手術や血管外科手術を中心に該当手術が定められています。手術あるいは化学療法施行科より歯科に口腔機能管理依頼をいただき、口腔管理を開始していきます。
主に治療前後の誤嚥性肺炎リスクの軽減、経口摂取再開支援、気管内挿管時のリスク軽減を目指して図のような対応を行っています。
・粘膜保護剤のご案内
化学療法や放射線治療で当科と大きな関わりがあるのが、口腔粘膜炎(口内炎)です。使用する化学療法薬にもよりますが、粘膜炎が悪化すると、予定通りの治療が進まなかったり、入院期間の延長につながったりし、医療者にも患者にも負担がかかることとなります。口腔粘膜炎に対しては決まった対応はなく、対症療法(症状に応じて対応すること)がメインであり、治療を順調に進めていく上では、「口内炎が起きにくい環境づくり」が重要です。そのため先に述べたような口腔内環境の整備を行っています。それでもときには口内炎の悪化は起きてしまいます。そこで、歯科からのみお渡しすることのできる「エピシルⓇ口腔用液」をご案内しました。
エピシルⓇ口腔用液は粘膜炎・口内炎の表面に接着性の保護膜を形成することで、疼痛の緩和を物理的に行うことができます。これまでにも患者さんにお渡ししておりますが、試験としてはまずまずの効果があるように感じております。お困りの患者さんがいらっしゃいましたらぜひご相談いただければ幸いです。
・歯科口腔外科からのお願い
周術期口腔機能管理を進める上で、治療開始までの期間があればあるほど、環境整備は進めることができます。現状は、マンパワーの問題もあり、すべての対象患者に周術期口腔機能管理を実施できてはいませんが、可能な限りで対応をさせていただきます。早め早めのご紹介をお願いさせていただきました。
患者さんの中には「手術しに来たら、口の中も良くしてもらえてよかった」だとか、「口のことやってもらって助かった」との言葉をいただける方もいます。
少しでも多くの患者さんに、歯科口腔外科受診をしてよかった!と感じていただけるように、スタッフ一同、努めてまいります。今後ともよろしくお願い申し上げます。