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学術コーナー

医局抄録

(医局研究会 2018.10)

眼科 佐々木 允

ゾレドロン酸水和物に起因するぶどう膜炎を経験したので報告する。
症例は60歳の女性で右眼の眼痛、視力低下、羞明を主訴に近位眼科を受診。ぶどう膜炎と診断され当院眼科に紹介となった。近医受診2日前より発熱・咽頭痛・関節痛といった症状も認めていた。
当科受診時は、角膜後面沈着物、全房内炎症細胞浸潤、虹彩後癒着、周辺虹彩前癒着といった前眼部炎症を示唆する所見を認めた。眼底は炎症による前眼部混濁により検査はできなかった。
採血や全身CTなど全身検査ではCRP、補体の上昇を認めるのみで、サルコイドーシスなど自己免疫疾患や感染などのぶどう膜炎の原因疾患となりうるものは認めなかった。
改めて病歴の聴取を行ったところ、近医受診3日前にゾレドロン酸水和物の初回投与があったとのことであった。ゾレドロン酸水和物に起因したぶどう膜炎の報告がされており、本症例もゾレドロン酸水和物によるぶどう膜炎として治療を行った。
治療はステロイド点眼による消炎治療、虹彩後癒着解除のための散瞳点眼を行い適宜漸減し当科初診後2か月で寛解に至った。

【ゾレドロン酸水和物について】
ゾレドロン酸水和物はビスホスホネート製剤であり悪性腫瘍による高カルシウム血症や多発性骨髄腫などによる骨病変に対し使用される。副作用として様々なものが報告されているが、眼への副作用としてはぶどう膜炎、強膜炎、結膜炎などがある。そのほかに頻度の多い副作用としては骨痛(9.1%)、発熱(7.9%)、嘔気(5.8%)、疲労(4.1%)、インフルエンザ様疾患(3.6%)などがあるとのことである。
単回ゾレドロン酸静注後(骨粗鬆症予防)の眼副作用発生率を調べた前向き研究では1.1%にぶどう膜炎を発症し、静注からぶどう膜炎の症状発症までの時間は3±2日であった。
ビスホスホネート関連眼炎症の正確なメカニズムはまだ分かっていないがビスホスホネート製剤が一過性にTNF-αとIL-6の主要サイトカインの増加を誘発するという報告があり、免疫細胞への作用が、ぶどう膜炎を引き起こしていると考えられている。

【まとめ】
ゾレドロン酸水和物はぶどう膜炎を引き起こすことがあるので、新規にゾレドロン酸水和物を使用し、眼症状を訴えた場合は眼科での精査が必要である。
ステロイド治療による予後は良好であるので、緑内障などの合併症をきたす前に早期の眼科的治療が重要である。