医局抄録
(医局研究会 2018.07)
放射線科 野畠 浩司
原発性肝癌に対するラジオ波焼灼療法(RFA)は肝障害度が良好で、脈管侵襲や肝外転移を伴わない腫瘍径3cm、腫瘍個数3個以内が適応となる。RFAの穿刺は超音波ガイドで実施される施設が圧倒的多数であるが、病変を描出できないか病変周囲の状況が把握できない場合は治療不能であり、文献では3−4割の結節がRFA不能となる施設も存在する。当院ではRFAに先立って肝動脈塞栓術を施行することで、腫瘍内に油性造影剤であるリピオドールが取り込まれるためCTガイドでの穿刺が容易となり、USで描出困難な病変も正確に治療が可能となる。
CTガイドでは経肺的に穿刺する機会が多いが、治療を要する合併症は多くない。耐熱性の低い肝外臓器である消化管や肝外胆管が治療域に接する場合は、人工腹水やヒアルロン酸注入で分離する。
これらの併用処置により、2010年以降現在まで治療適応のある肝癌は全て局所療法を実施している。その中にはリスクの高い症例も多数含まれるが、5年での局所制御率が86%、一度局所再発した後に再度RFA施行した結節を含めた二次制御率は95.7%であった。以上より原発性肝癌に対するCTガイド下RFAは優れた局所制御と重篤な合併症予防を両立し、生命予後も極めて良好に改善している。
近年ウィルス肝炎が制御される時代となって原発性肝癌の発生例が減少しているので、今後は転移性肝癌に対するRFA施行例の増加が期待される。またRFAは熱凝固であるが、凍結療法を含めた画像誘導下局所療法は肺や腎臓、副腎などの臓器への応用も期待されている。