5分でわかる!MRIのおはなし
(2018.5.30)
画像診断部 磁気共鳴専門技術者 佐伯幸弘
今回は、我々MRI室担当スタッフが患者さんよりよく質問される以下の2点について解説してみたいと思います。
①『MRIはCTとどこが違うの?よく似ているけど?』
よく聞かれます。ただし検査の待ち時間に説明するにはあまりにも時間がないので我々は『CTはX線で撮影していて、MRIは磁石と電波で写真を撮っています。』と説明します。
まずCTですが前述のように通常のレントゲン撮影で使用しているX線を発生するX線管球を人体の周りを高速回転させ照射&受光することで各部位(マトリクス)ごとのX線の吸収差を白黒写真に置き換えています。肺や腸の空気などX線をほとんど吸収しない部分は黒く(感光?)写りますが骨のように吸収が高い部位は白く(減弱?)写ります。X線管球と対になっている受光部がリアルタイムにこの吸収差を計算し画像にしています。
CT=Computed Tomography
Computed:コンピュータ利用
Tomography:断層撮影
(コンピュータを利用した断層撮影)
一方、MRIはCTと似ていてトンネル状ではありますが、X線管のようなものは存在せず、何かが回転していることもありません。トンネル自体が巨大な磁石です。物質が強力な磁場の中に置かれ、特定の周波数の電波を照射されるとその中の水素原子が同じ方向を向きます。(磁気共鳴・励起と呼びます)しばらくしてこの電波を切ると各組織(水・脂肪・骨・癌などなど)は独自の速さで元の安定した方向に戻っていく性質があります。(緩和と呼びます)この戻る速度差を白黒で表現したものがMRIです。
MRI=Magnetic Resonance Imaging
Magnetic:磁気
Resonance:共鳴
Imaging:画像
(磁気共鳴画像と呼ぶのはそういう理由です)
ただし、CTのようにリアルタイムで画像が出る装置と違い、励起と緩和の組合せにおいて待ち時間が存在するので撮影には時間を要します。また、同じ断面でも1種類だけでは診断できないので色々な特質をもった画像を撮影する分も時間を要する理由です。
まとめますと、
CT :X線の吸収差を白黒表現
MRI:水素原子の元の状態に戻っていく速さの差を白黒表現
装置は似ていますが、原理は全く異なります。
次に音の発生理由と撮影の簡単な原理を解説します・・・
②『MRIはどうしてこんなに大きな音がするの?もう少し静かにならないのですか?』
これも日常よく言われ、謝りながら業務をこなしています。この特徴については更に難しいので患者さんには『ごめんなさいね、MRIはこういう機械なんです。』としか言えません。以下解説したいと思います。
よく見る頭の横断像を例に解説したいと思います。まず左図の部分の1断面を撮影するとします。CTではテーブルを動かしながら撮影しますが、MRIはトンネル内まで動かした後、基本的に患者さんは動きません。目的の断面のみを画像化するために傾斜磁場というものを印加します。このように電気的に磁場を変化させることにより空気を振動させて音が発せられます。またトンネル状なので反響も大きく、騒音は倍増します。
断面が決定されてもテレビの映像と同様に画像の各マトリクスの個々の情報が入っていないので画像にできません。縦横軸のマトリクス毎の情報を得るために、先の傾斜磁場を少しずつ変化させてマトリクス数(例256個)の水素原子を『励起&緩和&データ収集』のセットを延々と繰り返します。
ここでお気づきになったと思いますが、より高画質(マトリクスが細かい)で撮影するほどこの手順数が増えますので撮像時間が要するということになります。
また、ゆっくり繰り返しているのであれば単調な音でそれほど大きなものではないのですが、検査時間を現実的なものに納めるためには間隔をできる限り短縮せざるを得ません。つまりはトントン♪ が ガーガー!ドンドン!!に変わっていくわけです。音の発生源はそういうところです。教科書的な原理上はトントンなのです。
高速にする(短時間で終える)ことで大きな音になるわけです。
特に頭部の検査ではこの傾斜磁場の繰り返しが耳付近で行われるので音はより大きく感じます。ヘッドフォンをしてBGMを流していますがそれでもやかましいです。
呼吸停止など技師と患者さんのコミュニケーションが必要な腹部の検査では耳栓はできないので我慢していただいています。
今回は簡単にMRIの特徴を解説してみましたが、少しでもご理解いただけたら幸いです。事前の説明で患者さんがリラックスして検査を受けて帰られるように努力したいです。