EUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺術)について
(医局研究会 2017.9.27)
消化器内科 國谷 等
当科では2年前からEUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引術)という検査法を導入しています。EUS(超音波内視鏡)は、内視鏡の先端に超音波プローベが付いており、消化管壁内や壁外の近接した病変を至近距離から観察する方法です。EUSの利点を活かして、経消化管的な超音波内視鏡下穿刺術(EUS-FNA)が開発され、広く普及してきています。
EUS-FNAでは、超音波画像で、腫瘍に穿刺針が入っていくのをリアルタイムに観察しながら、安全に検体を吸引採取し、細胞診や組織診を行います。FNAは診断能が高く、偶発症が少ない有用性の高い検査法です。
EUS-FNAは2010年4月に保険収載されましたが、当院では2015年にEUS-FNA装置の導入していただき、2015年7月に初めての穿刺処置を行いました。以後、2017年8月までの約2年間のFNA 症例は累計で39例となっています。そのうち35例は診断的FNAで、穿刺臓器別では膵が22例と最も多く、その内訳は膵癌が15例、膵内分泌腫瘍(NET)が3例などで、膵腫瘍19例中、17例で組織診による診断が可能でした。その他、食道、直腸でも1例ずつFNAを実施しています。また、FNAを応用した治療も行っており、経消化管的ドレナージ術を4例実施し、巨大な膵仮性嚢胞の治療などに効果を上げています。
実際の症例をご紹介します。膵癌をはじめとした膵腫瘍は画像検査だけでは確実な診断がつかないものがあります。画像的に診断がほぼ確定的で、安全・確実に手術可能と考えられる病変では、多少とも偶発症(出血、穿孔、感染、腫瘍の播種など)の危険性があるFNAを実施することはありませんが、手術適応がなく化学療法の適応となる症例では、最適な化学療法の選択のため、経胃的、経十二指腸的なFNAの実施は必須です。
また、膵神経内分泌腫瘍(NET)は、悪性度の程度によりNET-G1、NET-G2、NEC(神経内分泌癌)に分類されますが、それぞれで治療方針が異なります。治療前に病理学的診断を得ることが大切であり、FNAの適応となります。
消化管粘膜下腫瘍は、内視鏡検査でしばしば遭遇する疾患です。胃などの消化管壁内に発生した腫瘍ですが、正常な粘膜を被っており、通常の内視鏡下の生検ができないため、EUS-FNAによる診断が必要となります。消化管粘膜下腫瘍で特に重要なのは、悪性化の可能性がある消化管間質腫瘍(GIST)です。巨大なものは転移を生じ難治となりますが、早期に診断できれば、リンパ節転移が少ない特性があり、縮小手術のよい適応となります。2cm以上の粘膜下腫瘍では、FNAによる診断を行って、手術が推奨されています。当院では、GISTに対し、消化器内科医によるESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)と外科医による腹腔鏡下胃局所手術を同時に実施するハイブリッド手術であるLECS(腹腔鏡・内視鏡合同手術)を行っており、これにより切除範囲を最小とした、確実で侵襲の少ない治療が可能となっています。
導入後2年でまだ症例数はそれほど多いとはいえませんが、これまで病理学的な診断が困難で、診断・治療を他院に依存してきたケースでも、EUS-FNAの導入により、診断から治療までが当院で完結できるようになると期待されます。今後更にEUS-FNAの症例数を増やし、安全で確実な診断と、FNAを応用した治療、たとえば従来法でアプローチ困難な症例の、経消化管的な胆道ドレナージなどの治療の実施も目指していきたいと思います。