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学術コーナー

造影検査の時に注意すべきこと

(2017.07)

放射線科 堀地 悌

画像診断には大きく2つの要素があります。存在診断と質的診断です。
存在診断と云うのは異常や病変の有無を見極めること、質的診断は異常や病変がどういった類いのものであるかを判断する事です。今の高性能なCTやMRIを以てすれば一見簡単そうですが、どうしてこれがなかなか一筋縄ではいきません。一見正常と見分けのつかないかすかな異常、小さく認識の難しい異常所見、全く同じ様に見える異なる病変などなど。
さてCT検査やMRI検査ではしばしば造影剤が使用されます。造影剤の使用目的はずばり存在診断と質的診断をより容易にする事です。腫瘍の診断では造影剤の必要な場合が多いです。もちろん造影剤がなくても存在診断や質的診断の可能な疾患も沢山あり、造影剤が不要な場合も少なくありません。ですが診断においては造影剤を使ってデメリットとなる場合はほとんどありません。ならば全てで造影すれば良いではないかと思われるかもしれませんが,現実はそう簡単ではありません。
造影剤はインジェクターという機械を用いて正確な圧力や注入速度で静脈内に投与され、時には秒5mlにもなります。従ってまず太い静脈を確実に確保する必要がありますが、血管が細かったり深くにあって見えなかったりで難しい人も少なくありません。インジェクターで圧をかけて注射するため途中で血管外に造影剤が漏れてしまうこともあります。熟練した看護師さんが細心の注意を払い行いますが、それでも造影剤の血管外漏出を完全に防ぐ事は出来ません。また造影剤は比較的安全な検査薬ですが,それでも副作用の起こる場合があり、それを予見する事は困難です。しばしば気持ち悪くなったり、発疹の出る方がいらっしゃいます。まれですがアナフィラキシーショックと云う重篤な副作用も起こり得ます。16万人に1人程度と交通事故死の率よりもかなり低いものの造影剤の予期できぬ副作用で命を落とす可能性も皆無ではありません。従って造影は過去の副作用歴やアレルギー体質の確認を行うとともに、造影剤の必要性を十分に検討した上で、書面で本人の承諾が得られた場合だけに実施しています。当院では軽症、重症を含め年間5~10件ほど造影剤によるアナフィラキシーが起きていますが、救命救急科の素早い対処のおかげで幸い命を落とされた方はいません。
放射線科で使用する造影剤はヨード造影剤とガドリニウム造影剤の2つに分けられます。ヨード造影剤は主にCT検査や排泄性尿路影検査、血管造影検査で用いられ、ガドリニウム造影剤はMRI検査で使用されます。同じ造影剤と云ってもそれぞれの成分や作用機序は全く異なります。全く異なる薬剤ですので、一方で副作用があれば、他方でも副作用が起こる訳ではありません。
造影剤を使用する際には必ず確認すべき事があります。まずは過去の造影剤使用歴と造影剤での副作用の有無です。過去に造影剤でアナフィラキシーなど重篤な副作用のあった方への使用は”禁忌”です。また気管支喘息やアレルギー体質の確認が必要です。特に現在症状のある気管支喘息では副作用の生じる可能性が高いです。さらに腎機能障害の有無の確認も忘れてはなりません。腎機能が正常な方では心配はありませんが、腎機能低下のある方にヨード造影剤を使用すると造影剤腎症(更なる腎機能低下や腎不全)を来す可能性があります。腎機能低下の度合いに応じて造影剤の減量や事前の補液、造影を行わないなどの配慮が必要です。ガドリニウム造影剤では造影剤腎症は起きませんがが、腎機能が著しく低い場合には造影剤が体内に長く留まり腎性全身性線維化症と云うまれではありますが重篤な副作用を来す可能性があります。検査時の脱水状態は副作用の誘因となりますので、がぶ飲みをするので無ければ検査前の水やお茶の摂取に制限はありません。水分摂取には制限はありませんが、造影剤を使用する可能性のある場合には撮影部位に関わらず(腹部の撮影でなくても)緊急時などの例外を除き原則絶食となります。これは脳の奥にある嘔吐中枢が造影剤に刺激されて反射的に吐き気・嘔吐を来す事があり、吐物誤嚥にる肺炎や窒息を防ぐ為です。ビグアナイド系の糖尿病薬を服用中のかたはヨード造影剤使用前後それぞれ48時間の休薬が原則です。特に腎機能低下のある方では乳酸アシドーシスと云う重篤な副作用を来す危険性が高く注意が必要です。妊婦さんの造影や授乳中の方の造影にも配慮が必要です。

~造影検査時に確認すべき注意事項のまとめ~
1.過去の造影剤使用の有無とその時の副作用の有無
2.気管支喘息やその他のアレルギー体質の有無
3.腎機能低下の有無
4.脱水状態の有無
5.絶食の有無
6.ヨード造影剤(CT,排泄性尿路造影、血管撮影など)ではビグアナイド系糖尿病薬服用の有無/休薬の有無
7.妊娠、授乳の有無

CT、MRI検査では造影の有無にかかわらず、他にも留意すべき注意事項があります。別の機会に解説したいと思います。