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ニュース&トピックス

学術コーナー

心房細動の話

(医局研究会 2015.10)

循環器内科 藤田 崇志

心房細動は不整脈ひいては循環器疾患の中では最も一般的で、臨床ではだれもが一度は見たことがある疾患である。疫学上は、確認されているものでも高齢者の1割弱にみられる。また、今後さらに増加していくことが予想される。
心房細動の問題点は2つ。一つは脳塞栓をはじめとする塞栓症、もう一つは心不全である(図1)。特に、塞栓症に関しては発症以降のADL低下を考慮すると予防が非常に大事である。
脳塞栓症の予防としては抗凝固療法が挙げられる。以前から推奨されているワルファリンに加え、最近ではNOAC(新規経口抗凝固薬)が新たに適応となっている。現在、4種類のNOACが承認されており、大規模臨床試験からもワルファリンに同等~優勢となる有効性、安全性が確認されている(図2)。塞栓症の発症リスクに関してはCHADS2スコア(CHA2DS2-VAScスコア)が用いられる(図3)。最近では比較的早期より導入される傾向にあり、早期発見、早期治療が推奨される。
心不全に関して心房収縮の消失、頻脈(特殊な場合では徐脈)が心不全の誘因となるため心拍数の調節が重要となる。薬物的にはβ遮断薬を中心とした徐拍化や薬物や電気的に除細動(洞調律化)をすることが重要となる。急性期治療としては積極的な洞調律化を目指す必要は無く、頻脈による自覚症状の改善、心不全症状の改善を目指す傾向が主となっている。
一方で、循環器内科以外の医師が心房細動を見た場合、どうすべきか?
現在、治療中であるのか、新規発症であるのかで違いはあるが、とりあえずは循環器内科へのコンサルトで問題ありませんが、当科として、何点か確認事項があります。
①自他覚所見:動悸、胸部圧迫感、呼吸困難、血圧低下があるか
②発症時期:48時間以内の発症かどうか
③基礎疾患:心疾患の既往、肺疾患の既往、腎機能障害の有無
④抗凝固薬の使用が可能かどうか。
上記は治療手段を選択するうえで非常に重要である。
また、心房細動に対する治療としてカテーテルアブレーションが挙げられる。当院でも富山県において多数の症例数を有している。カテーテルアブレーションとは心房細動の発生源(多くは肺静脈起源)からの刺激を心臓内へ流入できなくすることで心房細動を停止させる治療で、主には肺静脈隔離といわれる、左房内で肺静脈からの流入部分を周回で通電し心房筋を熱変性させることで電気的に隔離する方法である(図4)。現在、デバイスの進化や手技の洗練化に伴い、手技成功率も向上しており、また適応も拡大傾向にある。若年の方、心房細動によりQOLが低下している症例、発症間もない症例はよい適応と考えられる。
カテーテルアブレーションを含め、積極的に治療していますので、今後も発見したら循環器内科へのコンサルトをよろしくお願いいたします。

図1~4(PDF)