鼻のお話し
(医局研究会 2015.05)
耳鼻咽喉科 宮川 祐介
一般的に鼻と言われればその形や見た目を気にするかもしれません。S南美容外科クリニックでは年間4500例以上もの手術を行っているそうで、その需要・関心の高さを物語ります。哺乳類の中では鼻は体の前端にあり(例外:イルカやクジラ類は頭部背面)、昔から物事の始まり・先頭・自分・自己主張の象徴として「はなからわかっている」「鼻が高い」「鼻をへし折る」などさまざまな慣用句が使われています。
耳鼻咽喉科ではどちらかといえば鼻の中の構造や機能に興味・関心を持っています。鼻は気道の一部であること、嗅覚を司っていること、この二つが大きな機能といえます。
最近のトピックとして好酸球性副鼻腔炎の診断基準とスギ花粉症に対して舌下免疫療法が登場したことです。
好酸球性副鼻腔炎は2001年に春名らが難治性の副鼻腔炎の鼻茸・粘膜をしらべたところ好酸球の浸潤が強いものが多数みられるとの報告により、副鼻腔炎の病態の一つが判明することになりました。2011年以降福井大学の藤枝らがJESREC studyにより好酸球性副鼻腔炎の臨床診断基準が提案され、手術せずとも診断→治療(ステロイド内服など)ができるようになりました。気管支喘息などと関連し、長期的な管理が必要な副鼻腔炎と言われています。
2014年秋にシダトレンが発売され、スギ花粉症の根治が期待できる舌下免疫療法が治療の選択肢となりました。皮下免疫療法に比べると、注射がなく苦痛が少ない、自宅でできる、アナフィラキシーの頻度が少ないなど利点がありますが、毎日の投与が必要で、1年半~2年以上治療継続しないと効果が得られにくいとも言われています。症状がひどい方や薬の効果が乏しくなってきたなどスギ花粉症でお困りな方は一度耳鼻科にご相談ください。
現在副鼻腔手術は一般的に鼻内視鏡下で行います。鼻の中は副鼻腔さらに蜂巣(cell)と言われる細かな部屋がある状態です。その部屋が閉鎖または入口部が狭いと細菌や真菌がたまって粘膜の炎症を来し、膿性鼻汁・鼻閉・頭痛・嗅覚障害などの症状がでます。手術の目的としては細かな部屋を大きな一つの大部屋にするイメージで、それによって排出口拡大、さらに含気化をうながすことになり炎症が鎮静化することになります。
当科では私が赴任してからの2013/4~2015/3の2年間で116例の鼻内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行し、重大な副損傷なく患者のQOLアップにつながっています。副鼻腔炎に対する治療の他、当院では構造の改善・鼻炎症状の改善のために、鼻中隔矯正術・粘膜下下甲介切除術、後鼻神経切除術も積極的に行っています。さらに今年度はナビゲーションが導入予定で、さらに患者の安全性の確保・手術精度の上昇につながるものと確信しています。
耳鼻科に限って言えば、厚生連高岡病院は富山県西部地区の手術が必要な鼻症例が集まり、私のような若い医者にとって手術チャンスが多く恵まれた病院で、そのような病院で3年間も勤務でき幸せです。そして根気強く一から指導してくださった西村先生には心から感謝しています。