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学術コーナー

院内危機管理 過去のCode Blueの検討から

(医局研究会 2013.09)

救命救急センター 廣田 幸次郎

院内心肺停止(CPA)などの急変時に、「Code Blue」 という名称に統一して現在のPHS番号(4444)に連絡する体制が周知されたのは初めての病院機能評価を受ける頃でした。今回、過去のCode Blue や院内CPAを検討し、今後予期せぬ院内CPAを減らすために当院が目指していく方向としてのRapid Response Team (RRT)というコンセプトをご紹介したいと思います。
当院のBLSチームが教えているこれまでのCode Blueの要請基準は、意識と呼吸を確認し、「(正常な)呼吸なし」と判断した時点であり、既に最悪の事態に陥ってからの連絡がほとんどでした。2009年の17例のCode Blueうち15例がCPAであったのに対し、ここ1年間は、47例のCode Blue のうちCPAは27例(57%)でした。その中でも、窒息など本当に全く予期せぬCPAは12例であり、残りは原疾患が急性増悪したために主治医からのDNAR orderが未だ出ていなかったケースやほぼ看取りと言って良いケースでした。また、CPAの原因としては致死的不整脈などの心原性が7例、窒息などによる気道閉塞が6例、誤嚥などによる低酸素や呼吸不全が3例あり、食物の窒息による気道閉塞以外はCPAになる前に関与できる可能性があると思われました。一般に院内CPA の予後は決して良好ではない印象があります。当院のCPA 27例の転帰は、17例(63%)で一旦自己心拍が再開し、うち9例(33%)は1ヶ月間生存しています。更にそのうちの2例(7%)は低酸素性脳症による意識障害を残しましたが、残り7例(26%)はほぼ後遺症なく回復しており、予想された転帰よりは良好な結果でした。
院内CPAの7割近くの患者は、発症6~8時間以内に何らかの異常を認めており、その異常を予め認識していた医師は25%であったという報告があります。当院においても最近はCPA以外の急変時にも連絡が入るようになってきました。過去1年間のCPA以外のCode Blue 20例を見てみると、気管挿管や人工呼吸を必要とする気道と呼吸の異常が10例。また、突然の意識障害や痙攣が6例でした。CTやMRI中の造影剤によるアナフィラキシーも年に1~2例あります。院内でのBLSやACLSの普及活動だけでは院内CPAの予後を改善できるエビデンスはなく、米国では10年ほど前から、Rapid Response Systemという集中治療の専門医や看護師あるいは呼吸療法士がチームとなって、呼吸、循環や意識に異常が認められた時点でベッドサイドに出向き、早期から治療に介入していく体制が提唱されています。過去1年間のCode Blue の中には、時には適切ではない依頼もないとは言えませんが、早めに相談してもらうという意味では健全なチーム医療体制になってきていると思われます。当院もICUの専従医や看護師および研修医のマンパワーが確保出来ればチーム(RRT)を組織し、患者さんが重症化を未然に防ぎ、ICUに入室しなくても済むようにすることが理想的と考えられます。