最近のNICU医療と富山県の周産期体制について
(医局研究会 2013.06)
小児科 今村 博明
医療機器の進歩によって日本の新生児の救命率は世界一のレベルに達し現在も維持しています。モニタリングの機器(SpO2、TcPO2/TcPCO2)の普及と人工呼吸器の進歩が大きく貢献しています。人工呼吸器には、N-DPAP(最近はSiPAP)とHFO方式とSIMV方式があり,以前の呼吸器に比べたら新生児の呼吸管理が楽になりました。輸液管理では、経皮的中心静脈カテーテルが普及し、点滴漏れなどのトラブルがほとんどなくなり児への侵襲が減りました。新しい治療として最近は仮死児に対して低酸素性虚血脳症の予防ないしは重症化の軽減を目的に脳低温療法を行うようになりました。出生後早期より72時間低体温(34℃)にして全身管理します。
NICU入院中の管理で変わったことは、ディベロップメンタルケア(発達促進ケア)を行うようになったことです。これは、早産未熟児や疾患を持った赤ちゃんの成長発達を助けるために、赤ちゃんの反応に合わせてケアを行っていくことや、処置や過剰な光刺激や音刺激による外的ストレスをできる限り減らしながらケアしていくことなどです。具体的には音環境、光環境、ポジショニング、ハンドリングのケアです。音に関しては、モニター音を消し、静かに歩き、静かに話す、保育器の開閉を少なくするなど。光に関しては、できるだけ部屋を暗くすることと、昼夜の照度を変えて日照リズムをつけるなど。またストレスを減らすためにポジショニング(胎内での姿勢に近づけることと異常な姿勢にならないように予防すること)や生後数日はできるだけ直接肌に触らないミニマムハンドリングを行っています。また呼吸循環が安定した早産児はカンガルーマザーケアも行っています。家族の面会もNICUには入れたのは、以前は両親のみでしたが最近は祖父母や兄弟もNICU入室して面会するようになりました。
富山県の出生数は年々減少していますが、低出生体重児の出生数は増え続けています。晩婚化とともに出産年齢の高齢化、不妊治療による出産の増加も原因の一つに挙げられます。このため出生数は減少しているにもかかわらずNICUに入院する新生児は増加傾向になっています。富山県にあるNICUは実質3病院で、県立中央病院、富山大学、厚生連高岡病院です。NICUには専任医師が必要なのですが、県立中央病院には6名、富山大学には7名いるにもかかわらず当院には1名しかいません。