創傷治癒のup to date
(医局研究会 2013.02)
形成外科 宮永 亨
形成外科領域の疾患および手術法を、写真を供覧しながら説明させていただきました。形成外科領域の疾患は熱傷、顔面外傷・顔面骨骨折、皮膚・軟部腫瘍、先天奇形(新唇裂、副耳、小耳症、多指症など)、瘢痕、手の外科、眼瞼下垂、陥没乳頭、臍ヘルニア、腋臭症、美容外科と多岐にわたります。一言でいえば、外表面の外科といえるかもしれません。植皮術や皮弁術などにより皮膚欠損や軟部組織欠損を治療し、顔面骨骨折や手の骨折などでは整復固定術、その他、各症例に対する様々な治療法を行っています。
そして、もう一つのお話として、現在の創傷治癒のトピックとして広まっているVAC therapyについて講演させて頂きました。VAC therapyは陰圧閉鎖療法の一つであり、創部の環境を整える治療法として、消化器外科、胸部外科、整形外科の分野でも応用されています。その創治癒促進作用は主に3つの要素からできています。それは①滲出液の除去②肉芽形成促進③局所感染制御です。過剰な滲出液は創治癒を遅延させるため、滲出液を吸収し排除する創傷被覆材が現在まで数多く開発されましたが、陰圧閉鎖療法は他のどの創傷被覆材よりも効果的です。また、肉芽が増生する効果も最も強いと考えられます。これは陰圧負荷による線維芽細胞の活性化が要因と考えられています。さらに、ある程度の菌が創面に存在しても効果があることは突出すべき利点です。これにより、戦争中のアメリカ兵士の感染率が激減し、生存率が格段にアップしました。このように、現在では最も効果のある陰圧閉鎖療法ですが、さらにフィブラストスプレーと併用することにより、その創治癒促進効果は絶大なものになります。当院は富山県西部地区の中枢機関病院であるため、この器械を当院形成外科に1台常備してもらっています。胸部外科の縦隔炎による創離開や、消化器外科の腹膜炎による創離開、整形外科の開放性骨折などに利用可能であるため、他科の先生方でお困りの症例がありましたら、是非当科にご相談頂けると幸いです。