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ニュース&トピックス

学術コーナー

最近の薬疹について

(医局研究会 2013.01)

皮膚科 木村 浩

最近、当科外来でも診る機会が多くなっている分子標的薬による薬疹と、重症薬疹における最近の知見についてまとめてみた。
1.分子標的薬による薬疹
イレッサ®(ゲフィチニブ)、タルセバ®(エルロチニブ)、アービタックス®(セツキシマブ)ベクティビックス®(パニツムマブ)は多発性、転移性肺癌などに使用される上皮増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)阻害剤である。これらの薬剤では共通して顔面、項部、四肢にざ瘡様皮疹、体幹四肢に乾皮症、顔面の眉毛部から鼻翼(いわゆるTゾーン)に脂漏性皮膚炎、手足の爪囲炎などを高頻度に生じることが明らかになっている。
治療は通常の尋常性ざ瘡などに準じるが、一進一退を繰り返し治療は比較的長期にわたることが多い。ざ瘡様皮疹においては、重症であればミノマイシン100~200mg/日、1~2週間内服とし、ベースには抗アレルギー剤、ビタミンB2、B6製剤内服を継続している。また外用は顔面ではmedium~strong、体幹四肢はverystrong程度のステロイド軟膏を処方し、効果は出ていると思われる。
現在、考えられる作用機序は一般的なアレルギーとは関係なく、表皮基底層のケラチノサイト、毛包の外毛根鞘細胞、汗腺組織の脂腺細胞の表面に存在するEGFRに対し、これらの分子標的薬が直接細胞を傷害しているとされる。
ネグザバール®(ソラフェニブ)、スーテント®(スニチニブ)は多発、転移性腎癌などに使用されるマルチキナーゼ阻害剤である。これらの薬剤では内服開始し2~3週間をピークに手足症候群が高頻度に認められる。治療は掌蹠に水疱や血疱を生じる重症例ではstrongestのダイアコート®、デルモベート®に亜鉛華軟膏を重層塗布し、ガーゼと包帯保護で治療している。これにビタミン剤、抗アレルギー剤内服も適時追加する。急性期治療が終了後は症状が軽快し、分子標的薬内服は継続できることが多いが、主訴の手足のヒリヒリ感、疼痛は強いようである。
 
2.重症薬疹について
薬剤過敏症症候群(Drug induced hypersensitivity syndrome:DIHS)はカルバマゼピン、アロプリノール、DDS等の限られた薬剤内服後、数週間から数か月後に全身の紅斑から紅皮症となる病態である。さらに発熱、肝機能障害、HHV-6の再活性化なども出現し、原因薬剤中止後2週間以上、症状が持続することも特徴的である。問題は診断基準に皮疹の臨床的特徴の記載が全くないことであり、中毒疹としては臨床診断可能であるが、初期にDIHSを確定診断することは難しい。
治療は早期からステロイド内服、必要であればステロイドパルスなどを必要とする。DIHSの作用機序については、限られた薬剤はいずれも免疫系に影響を与えることが明らかになっており、B細胞やNK細胞の作用を低下させ、そのためにHHV-6、CMV、EBVが再活性化し、それに反応してT細胞の活性化と薬剤特異的T細胞の活性化も生じると考えられている。
Stevens-Johnson症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)は一般的な総合感冒薬に含まれるアセトアミノフェン、ロキソプロフェン、イブプロフェンなどの解熱鎮痛剤、セフェム系、ニューキノロン系の抗生物質などが原因とされ、全身が紅皮症化、熱傷様の表皮壊死を生じる重症薬疹である。我が国では全身の10%以下の皮疹はSJS、10~30%の皮疹はSJS/TEN overlap、30%以上の皮疹はTENと診断される。最近は一般的に多形紅斑とSJS、TEN型薬疹は同一スペクトラムに属すると考えられており、多形紅斑型中毒疹からSJS/TENへの進展を見逃してはならない。
臨床的な多形紅斑の特徴は四肢、掌蹠にみられるtarget lesionであり、診断上重要である。多形紅斑のtarget lesionは三層性のraised typical targetであり、浮腫性で中心より赤、白、赤と三層性同心円状の紅斑がみられるといわれている。一方、SJS/TENのtarget lesionはflat atypical targetといわれ、表面平坦の非定型的の紅斑であり、中心に水疱を伴うことがあるとされる。初診の時点でこれらの所見が主に体幹にみられた場合は、常にSJS/TENに進展する可能性を考えたほうがよいであろう。
治療は免疫低下や重症感染症がなく、ステロイド治療が可能な場合はプレドニン換算で中等症は0.5~1.0mg/kg/day内服、重症は1.0~2.0mg/kg/day内服から開始する。パルス療法の場合はMPSL500~1000mg/dayを3日間点滴投与する。またステロイド治療が不可能な場合は、免疫グロブリン大量療法を3日間だが、現在保険適応は認められていない。血漿分離療法は保険適応が認められており、連続または隔日で3日間施行は、近年成績が良いようである。以上、1月医局会での発表をまてめて報告した。