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ニュース&トピックス

学術コーナー

最近の当科の頭頸部がん治療:特に喉頭温存について -2012- 談志さんは今や当たり前?

(医局研究会 2012.1.17)

耳鼻咽喉科・頭頸部がん専門医 西村 俊郎

抄録:
最近の頭頸部がん治療に関するエビデンスを概説し当科の現況を報告した。
1.頭頸部治療のトレンド:頭頸部がんは頭蓋底から、鎖骨までの範囲の臓器から発生する。喉頭がん、咽頭がん、口腔がんをはじめとして、鼻・副鼻腔がん、唾液腺がん、甲状腺がんがあげられる。最近中咽頭がんでは、子宮頸がんでよく知られているヒト乳頭腫ウイルスHPV16, 18の持続感染から発症する例が増加しており、日本でも過半数に達していると推定されている。喉頭がんの年間死亡者数は1000人前後で増減がなく、これは禁煙による発症数の減少と高齢化による増加が相殺しているためと推定される。一方、口腔咽頭がんは急増しており1985年ころは年間の死亡数が2000人程度であったのが、2009年には7000人近くまで増加している。これは先述のHPVのみならず、日本ではアルコール飲料が発がん物質であるという認識が欠けていることも、大きく影響していると推測される。
頭頸部がんの治療は過去には手術が中心であった。しかし1991年に進行喉頭がんで導入化学療法後の根治的放射線治療が、手術(喉頭全摘と術後放射線治療)に比して生存率を悪化させることなく喉頭温存が可能であることが報告された。それ以来、放射線化学療法による臓器温存療法が患者のニーズに一致した治療として評価され、喉頭、咽頭領域の進行がんでは第一選択の治療となりつつある。抗がん剤と放射線治療の同時併用が最も生存率の向上に寄与するとのエビデンスが豊富だが、最近ではタキサン系抗がん剤を用いた導入化学療法や分子標的薬の導入も話題となり、エビデンスが積み重ねられている。

 

2.当科の現状:2006年4月からの5年間に当科にて根治目的で治療した症例を後ろ向きに検討した。基本的な治療方針が化学放射線療法である中・下咽頭、喉頭の進行がん(III, IV期)については2011年3月末時点での治療成績を検討した。結果:この期間に当科で根治治療をうけた症例は139例 (年齢:12-98歳、中央値69)で、このうち中・下咽頭、喉頭の進行がんは36例あり、Kaplan – Meier 法による病因特異的推定3年生存率は70%(生存期間は4-53月、中央値19月)と良好な結果であった。また喉頭温存率は3年で78%に達し(死亡もエンドポイントに含めると58%)、臓器温存の面からも一定の水準を保った診療であることが示された。考察:当科の現時点での治療結果は妥当な生存率と臓器温存率を示していると考えられた。富山県では少数例を治療する施設が多いと推測され、治療方針は各施設の特徴を尊重するにしても、県全体として妥当な治療成績を確保する必要がある。症例数の少ない頭頸部がん治療の質の確保には、各施設が連絡を密にして診療にあたる必要がある。我々は機会あるごとに、県全体での頭頸部がんの検討会や連絡会の創設が望まれることを提言している。全国的にはさらに状況に応じた踏み込んだ治療ガイドラインの作成と治療成績目標の設定、臨床試験への参加環境の整備を希望している。