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ニュース&トピックス

学術コーナー

気象と病気、その2 ことわざと解釈

(医局研究会 2011. 4)

リハビリ科 長谷川 健

昔からの言い伝えや諺(ことわざ)には、先人の知恵や経験則が含まれ、現代人の科学的納得を得て生活の中に息づいています。「夕焼けは晴れ」は幼い日の原風景とともに、翌日は晴天になるという天気予報を提供しています。そこには、日本のような中緯度帯の天気は偏西風に乗って西から東に移動する高気圧・低気圧によって支配される、という気象学の基本が端的に表現されています。
天気と人の体に関する諺では、「神経痛や関節が痛むと雨」「古傷が痛むと天気が悪くなる」「季節の変わり目は不調」がよく知られています。実際、一般生活者と慢性疾患患者の約73%が天候や季節変化の体調への影響を経験している、というアンケート調査結果があります。(テルモ、2006) 
天気の変化や季節の変わり目に体調がくずれて起こる病気には、関節痛、リウマチ、熱中症、気管支喘息、頭痛、脳卒中、心臓病、結石症、感冒、うつ病など多数あり、これらを「気象病」と呼び分類する考え方もあります。(生気象学)
この気象病の原因としては、気温、気圧、湿度などの急激な変化が複合して起きるとき、体内環境を一定範囲に保つ働きをする自律神経系、内分泌系、免疫系などの機能がついていけず発病したり持病の悪化が起きると考えられます(図1)。
こうした気温・気圧・湿度の急激な変化をもたらす気象の代表例が図2のような天気図です。前線を伴った低気圧が日本海上で発達しながら北東に進む気圧配置は日本海低気圧型と呼ばれます。はじめは低気圧に向かって吹きこむ強い南風。やがて低気圧の東進につれ中心から南西に延びる寒冷前線が日本列島をスキャンする形で通過中は短時間に強い雨(驟雨)、突風、落雷、ときに竜巻も伴い、通過後は一転して北よりの風になる経過(図3,4)は、みなさん、「ああ、あれか」と思い浮かべる方も多いでしょう。
この型は、一年のうちでも春に顕著にみられます。
立春から春分の間(2/4~3/21頃)に吹くその年初めての強い南風は、気温を急に上げるので「春一番」と呼ばれます。今年、富山県では3月20日でした。次の日、日本海低気圧が東の海上にぬけると再び西高東低の冬型となり、雪が舞い寒さがぶり返す「寒の戻り」です。「春は名のみの風の寒さや」の歌もこの頃です。
4月、春爛漫の桜に日本海低気圧がやってくると、無情にも落花狼藉。「花發多風雨、人生足別離」(于 武陵。井伏鱒二訳:花に嵐のたとえもあるぞ、さよならだけが人生だ)今年も古城公園が満開の16日(図5)に寒冷前線が通過しました。
4月下旬から5月は、特にこの低気圧が急激に発達。台風並みの暴風により海や山の遭難を多発させ「メイ・ストーム」とよばれます。また太平洋側から脊梁山脈を越えて日本海側に吹き下りる南風は、乾燥した熱風となってフェーン現象(図6)を引き起こし、過去富山県の大火の発生も4,5月に集中しています。
春は、実は風の強い季節であり、このような大荒れの天候のときは、自然の一員である私たち人の体の中でもホメオスターシスに嵐が吹き荒れ、発病、増悪、再発、不調となって現われてくることになります。
諺の中には世につれて解釈が変わってしまったものもあります。「病は気から」もそのひとつ。機会があれば、その源流を訪ねたいと思います。

 

図1.

 

図2.日本海低気圧型
(「百万人の天気教室」白木正規 成山堂書店 2000)

前線を伴った低気圧が日本海で発達しながら北東へ進む気圧配置。低気圧が三陸沖へぬけると西高東低になり、冬型の天気に逆戻りする。

 

 

図3.温帯低気圧の水平面の構造
(「図解 気象・天気のしくみがわかる事典」青木孝 成美堂出版 2009)

低気圧の南側は暖域と呼ばれ南西の風が吹きこみ、北側では冷たい北寄りの風が吹く。その境目の寒冷前線付近では上昇気流で積乱雲が発生し、短時間強雨、突風、落雷、竜巻などの激しい気象現象が起こる。

 

 

図4.日本海低気圧に伴う寒冷前線。
  (「新・天気予報の手引き」安斎政雄 日本気象協会 1998)

 

低気圧の中心から南西にのびる寒冷前線が、時速約35~40km/時の速さで西から東へ日本列島をスキャンするように移動する。ただし、荒天を見上げても三角形の旗が付いたロープの動いていくのが見えるわけではない。

 

 

図5.平成23年4月16日の天気図(画像:気象庁)

花だよりで古城公園、朝日山公園が「満開」、松川べりが「散り始め」の16日午前中に北陸地方を寒冷前線が通過して雷雨。前日の15日は低気圧南側の暖域にあった高岡では南風で伏木アメダス25.4℃(内陸の市内はもっと高い)の夏日。通過後は一転、16日の最高気温16.4℃、17日11.4℃と下がり、寒暖の差が激しい花冷えとなった。

 

 

図6.フェーンが発生するしくみ
  (「百万人の天気教室」白木正規 成山堂書店 2000)

気流が風上の山腹を上昇するとき、雲ができ始めると湿潤断熱減率で100mにつき約0.5℃で温度が下がる。空気中の水蒸気がすべて雨になって降り落ち、山頂から風下の斜面を下降するときは、100mにつき1℃の乾燥断熱減率で昇温し、ふもとに着いたときは乾燥した高温の風になる。