頭頸部がんの動注化学放射線療法の成績は通常の静脈からの同時併用と同等と報告されました
(2011)
耳鼻咽喉科
頭頸部の進行がんでは、臓器の温存を目指して抗がん剤と放射線を同時に併用する化学放射線治療が、放射線単独療法より効果があることは数々の試験で証明されてきました。この抗がん剤を動脈からカテーテルを用いて直接患部に注入する動注化学療法は、これまで第2相試験(効果があるかどうかを確認する試験)の報告で通常の静脈投与より、奏功率や生存率が優れていることを示唆する報告が多くあり、日本国内でもいくつかの施設が追随しています。しかし、これまで標準的な治療法である静脈投与と同じ条件で比較した第3相試験の報告がなく、明確なエビデンスがない状態が続いており大変憂慮される状態でした。
このたびオランダの研究グループから明確なエビデンスとなる論文が報告されました。報告者のRaschらは(Cancer 2010;116:2159?65)は治療開始から3年後の時点で動注では局所制御率、局所と頸部の制御率、無病生存率、全生存率の順で76%、 63%、44%、 51%であったのに対して通常の静脈投与では70%、65%、47%、47%で統計学的に有意差はありませんでした。
頭頸部がん患者さんの多くは高齢の男性であり、動注療法で行うカテーテル操作により脳血管障害のなどリスクもあり、あえて動注療法を選択する根拠はなくなったといえます。