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厚生連高岡病院

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ニュース&トピックス

学術コーナー

気象と病気、その1 風病今昔

(医局研究会 2011. 1)

リハビリ科 長谷川 健

 「輪島の上空に-41℃の非常に強い寒気が入り、西高東低の冬型の気圧配置が強まる見込みです。このため北陸では80cmの・・・」これを書いている1月15日夜のニュースが、今冬一番の寒波襲来を伝えています(図1、2)。高層天気図を見ると高岡の上空5400m(500hPa)の気温は-39℃。-35℃以下が大雪の指標です。
そして、インフルエンザも流行期に入りました。教科書的にはインフルエンザウイルスは低温・低湿の環境を好み、東京での患者数は冬に最低気温が8℃以下・日平均湿度が50%以下で急増し、70%以上では少ないと書かれていたりします。この点、富山ではどうなのでしょうか。富山地方気象台のデータでは、四季を通じて富山の平均湿度は70%以上を示し、しかも冬が一番高く約80%にもなります。富山では湿度は予測の目安にならないようです。
そこで、足元の流行の特長を眺めてみます。当院では、毎週月曜日検査科からインフルエンザ検出情報が院内LANに発表されます。迅速診断キットによる週ごとのA型・B型インフルエンザウイルス抗原検出数のわかりやすい集計グラフです。これと伏木アメダスのデータから算出した日平均気温の週平均値(WMT)のグラフを重ねてみます。2004/05年、2006/07年を図3、4に示します。WMTが下がり出しシーズン初めて3℃を切る週辺りから患者が出始め、その約10週後にピークに達する1峰性の分布、が季節性インフルエンザの基本パターンのように思われます。
昨シーズン2009/10年は、新型インフルエンザA/H1N1/2009(H1N1pdm)が猛威を振るい(表1)、当院でも真夏の高温もものかは、8/3-8/9(第32週)に患者が出始め11/23-11/28(第48週)にピークとなり4/19-4/25に終息する変則的なパターンを示しました(図5)。21世紀最初の世界的大流行・パンデミックです。20世紀には人類は3回のパンデミックを経験し(表2)、1918年のスペインかぜでは全世界で7千万人が死亡しました。パンデミックごとに新型ウイルスが従来型を追い出し、オセロゲームのように季節型に置き換っていく理由はまだわかっていません。これら3大パンデミックから学ぶべき教訓の一つは、いずれにも翌年ないし翌々年に流行の第2波があったことです。
ところで、江戸時代にも12回の“パンデミック”がありました(表3)。厳重な鎖国が敷かれた初期には116年の間隔がありましたが、中期以降は吉宗が享保の改革で設けた長崎の出島から世界流行が時を移さず入ってきています。江戸の人々は各流行に愛称(?)を付けたりしています。享保18年(1733)の風病は6月から7月にかけ全国的に大流行し、江戸では夏の1か月で死者8万人を数え棺もなく酒樽を代用し、寺は埋葬場所がないと断り、貧しい者の亡骸は菰に包んでことごとく品川沖に流した、と記録されています。
さて、今シーズンの状況です。国立感染症研究所によれば、年明けから全国的に新型(H1N1pdm)が急増しています。当院では12/20-12/26からA型患者が出始めました(図5)。暦では今が「寒の内」。これから2月中旬にかけまだまだ気温の低い日が続きます。昨シーズン、新型患者の少なかった5歳未満と20~40代を中心に今後のA型の動向から目が離せません。

 

図1.地上天気図、平成23年1月16日


 日本付近は等圧線が縦に混んで西高東低の強い冬型の気圧配置となっています。

 

 

図2.気象衛星画像、平成23年1月16日12時

赤道上空36,000kmの静止気象衛星ひまわりから見た可視画像。大陸からの寒気の吹き出しが極めて強いため、筋状の雲は日本海だけでなく脊梁山脈を越えて太平洋や、また黄海、東シナ海にも見られます。一冬に1度か2度の寒波です。

 

 

図3.当院インフルエンザウイルス抗原検出状況、2004/05年

 

 

図4.当院インフルエンザウイルス抗原検出状況、2006/07年

 

 

 

表1.現在、人に感染するインフルエンザ

 

図5.当院インフルエンザウイルス抗原検出状況、2009/10年

8/3-8/9以降に増加、11/23-11/28にピークとなりその後減少し4/19-4/25に終息。ほとんどすべてA型

 

 

 

表2.  20世紀の3大パンデミック

 

 

表3.江戸時代の“パンデミック”(風病、風疫、傷風)

 

 

図6.当院インフルエンザウイルス抗原検出状況、2010/11年