症状から見る皮膚の悪性腫瘍
(医局研究会 2010. 9)
形成外科 西尾明子
当院の形成外科で手術を受けた皮膚腫瘍の患者さんのうち、1割弱が皮膚の悪性腫瘍と診断されます。はじめから自分で悪性を疑って受診される方もおられますが、傷や湿疹と思って治療を受けにこられる方も少なくありません。では、皮膚の悪性腫瘍はどんな症状から始まるのでしょうか。
悪性腫瘍と診断された患者さんの、初診時主訴の一例です。
「これはほくろでしょうか?がんでしょうか?」
「ぶつけてできた傷がなかなか治りません。」
「薬を塗っているのに湿疹が治りません。」
皮膚にできる悪性腫瘍には特徴的ないくつかの症状があります。黒色の病変、難治性潰瘍、軟膏治療で改善しない湿疹、肉芽状・いぼ状・シミ状の病変、腫瘤などです。これらの症状が悪性腫瘍によるものかそうでないかは、見た目や経過から推定することはできますが、診断の確定には病変の一部、もしくは全体を切除して病理組織検査を行う必要です。
病理組織検査で悪性と診断された場合、腫瘍を確実に取り除くことができるよう、一見正常に見える部分も含めてやや大きめに切除します。切除して皮膚がなくなった部分は、小さいものや皮膚に余裕のある部分であれば縫合できます。しかし大きい病変の場合や、腫瘍の種類によっては広範囲な切除が必要となる場合もあり、縫合できないような大きな皮膚欠損となることもあります。そのような場合は皮膚移植や皮弁などによる再建手術を行います。術後の見た目をなるべく目立たなくするよう考慮して手術をしますが、腫瘍の種類によっては再発した場合すぐに発見できるように薄い皮膚を移植することもあり、その場合傷痕が多少目立ちます。
当院の形成外科では年間約30例程度の皮膚悪性腫瘍に対して手術治療を行っています。高齢化に伴い今後もその数が増えていくことが予想されます。本人や家族が傷や湿疹と思っていても、実は悪性腫瘍であることもありますし、逆に前述の症状があるからといって悪性であるとは限りませんが、ちょっとした症状が悪性腫瘍を発見する手がかりになることがあります。早く発見できればよりよい結果を得られ、治療法が違ってくることもあります。気になる症状がある場合にはぜひ早めに形成外科を受診してください。