疥癬について
(医局研究会 2010. 8.25)
皮膚科 新石 健二
定義
疥癬とはヒト皮膚角質層に寄生するヒゼンダニ(疥癬虫,Sarcoptes scabiei var. hominis)の感染により発症する。寄生虫の虫体や排泄物などに対するアレルギー反応による皮膚病変とかゆみを主症状とする感染症である。
虫
雌成虫の体長は約400μm、雄は雌の約60%の大きさ。吸血性のダニではない。
生活環
卵→幼虫→若虫→成虫と脱皮を繰り返しながら成長。
卵は3~5 日で孵化し,その生活環は約10~14 日間。
特徴や弱点
乾燥に弱い。気温が16℃ 以下では動かない。皮膚から離れると数時間で感染力が低下する。
高温に弱く50℃、10 分で死滅。
病型分類
①通常疥癬:疥癬虫5匹以下。肌と肌の直接接触感染。約1~2 カ月の無症状の潜伏期間。
②角化型疥癬:疥癬虫100 万~200 万匹。接触の他、角質層が飛散することにより,肌と肌の直接接触を介さずに感染。潜伏期間も4~5 日に短縮。
臨床症状
・通常疥癬
①手関節屈側,手掌,指間,指側面に好発する疥癬トンネル。
②臍部を中心とした腹部,胸部,腋窩の激しいかゆみを伴った紅斑性小丘疹。
③外陰部に見られる小豆大,赤褐色の結節。
・角化型疥癬:免疫低下状態、高齢者などに発症。角質増殖、紅皮症状態。
検査
疥癬トンネルなどより虫体、虫卵を検出する。有効な血液検査なし。
診断
臨床症状、虫体、虫卵の検出、疫学的条件。
治療
保険適応:イオウ外用剤、ストロメクトールの内服。
保険適応外:クロタミトン外用。
特殊製剤(インフォームドコンセント):安息香酸ベンジルローションやγ-BHC液。
爪疥癬には、内服薬が無効であるため外用密封療法が必要。
集団発生時
通常疥癬:一般の感染症に準じた対応。外用や内服治療。
角化型疥癬:個室隔離、予防衣着用、リネンの管理、環境の整備。外用や内服治療。
今後
ペルメトリン外用薬などの保険適応が期待される。