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ニュース&トピックス

学術コーナー

ビスフォスフォネート関連顎骨病変の病態とその対応

(医局研究会 2010. 5.19)

歯科口腔外科 阿部一雄

ビスフォスフォネート(以下BP)は破骨細胞にのみ取り込まれ、アポトーシスを誘導し骨吸収を抑制する。また癌細胞に対してもその効果が報告されている。そのため骨粗鬆症治療の第一選択薬であり、透析患者に見られる腎性骨異栄養症、高カルシウム血症、癌骨転移抑制、癌転移に伴う骨痛み、多発性骨髄腫に合併する骨関連事象など効果、有益性より骨疾患の治療薬として広く使用されている。
顎骨病変との関連は2003年 MarxらがBPが顎骨壊死の発症に関連していることを報告し、それ以降BP関連顎骨壊死(Bisphosphonate- Related Osteonecrosis of the Jaw : BRONJ)の発症と報告が急速に増えている。米国、豪州の報告では注射BP製剤で1人/1000人、経口BP製剤で1人/10万人程度の発症率である。BP製剤自体の使用は1960年代後半から使用されており、近年に急に報告されるようになったのは不明である。窒素含有BPは骨との親和性が高く、より高度に蓄積するためBRONJの発生率も高まったとされている。もっとも強力なBPであるゾレドロン酸(商品名:ゾメタ)では投与期間12か月、パミドロン酸(商品名:アレディア)24か月、経口のアレドロン酸(商品名:ボナロン、フォッサマック)24か月を超えるとBRONJの発生リスクが高まるとされている。最近の病理組織的な解析では、顎骨壊死組織のほとんどに腐骨、細菌感染、慢性骨髄炎が観察されている。発症原因として顎骨の虚血性変化による壊死ではなく、顎骨、歯周組織の細菌感染状態にある特殊性が影響していると考えられている。既成の慢性的な歯性病巣感染による、慢性の骨髄炎の罹患が合併しているとも考えられている。
当初BRONJの発症は時に臨床症状が強く、広範な顎骨吸収や著しい疼痛を認めること、ならびにその発症原因が明らかでないため医療現場でもその対応に混乱を招いていた。最近、ここ数年の報告が科学的に集積分析され、その予防、発症後の対応に統一された見解が報告された。BP製剤投与中の患者の休薬については、注射BP製剤はその治療対象、生命予後より原則休薬は行わず、侵襲的歯科治療も避けるべきであるとされた。経口BP製剤については、投与期間3年未満でリスクファクターのない場合では侵襲的歯科治療を行う場合でも休薬の必要がないとされた。投与期間3年以上や、リスクファクターのある場合には、侵襲的歯科治療の前に骨リモデリングを考慮し、骨折のリスクが低いと判断された場合に3か月の休薬が望ましいとされた。
当科では2007年7月から2010年3月までに9例のBP関連顎骨病変を経験した。
経口5例、注射4例であった。いわゆるBRONJと診断される症例は経口2例、注射4例であった。注射では侵襲的歯科治療のない自然発症例が3例あり、歯槽骨の隆起部や義歯の不適合部位に発症を認めた。本邦での具体的な統計報告はないが、他施設の報告でも経口患者のBP関連顎骨病変は多い傾向にあり、当院でもその傾向であった。経口では、全例侵襲的歯科治療(抜歯)が発症契機となっており、術前に十分な発症リスクの確認が必要と考えられた。リスクファクターもなく、約2年の経口内服での発症例も認められた。症状の発現は急性疼痛を認め、発症後の患者の苦しみは強く、安楽を守る意味でもその予防は重要と考えられた。
最近では処方医師、歯科医師と連携がとられ、術前に有益性と危険性を十分に考察することによりBP関連顎骨病変の発症の回避がなされている。