耳鼻咽喉科(頭頸部外科)
わたくしたちは頭頸部がん(口やのどのがん)、甲状腺がんの治療や鼻・副鼻腔疾患の専門医療機関として努力いたします。
おかげさまで昨年は(2021年)の新規がん症例として(甲状腺がんを除く)初発26例 再発2例の治療をさせていただきました。内訳は耳下腺がん1例、上顎がん1例、喉頭がん11例(声門がん6例、声門上癌5例)、舌癌5例、中咽頭がん5例(側壁4例、前壁1例)、梨状陥凹5例でした。私たちと患者さんの信頼関係の証だと感謝しております。これからも地方の一病院ではありますが、地道に基本に忠実で心のこもった医療を提供することを心がけてゆきます。
また2021年甲状腺関連手術は甲状腺関連29例に行いました。うちわけは良性腺腫(4cmを超える)10例、甲状腺がん16例 (全摘6例 半切7例 その他3例(神経移植3例)、副甲状腺手術3例でした。
また鼻副鼻腔関連の内視鏡手術は72例に施行しました。全例にナビゲーションを使用し、術前にアレルギー関連の詳細な評価と画像診断(CTで3方向の評価)を行って慎重に手術適応を決定しています。多くの患者さんに安全で効果的な手術が提供できたことに喜びを感じています。
耳鼻咽喉科では、こんな治療がうけられます
・頭頚部癌治療では最新の化学療法がうけられます。
2019年12月末に免疫チェックポイント阻害薬(免疫を活性化してがんを治療するお薬)のキイトルーダが再発・転移頭頚部癌で使用できるようになりました。似たお薬のオプジーボはプラチナ系抗がん剤が効かない症例のみ使用可能でしたが適応がひろがりました。従来の治療にくらべて生存率が向上しており、今後期待できる治療法です。当院では豊富ながん化学療法の経験や人材を生かして安全にうけていただけるよう努力しております。従来の抗がん剤治療では効果が期待できなかったような例でも効果が認められ、抗がん治療の進歩を実感しております。
・鼻の内視鏡手術でナビゲーションシステムを全例に使用しています。 順調に多くの患者さんに安全な手術を提供させていただいております。
鼻の副鼻腔手術(蓄膿症やアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎の手術)は、眼球や脳が近くにあって時に危険性が生じることがあります。当科では2016年2月からメドトロニク社製フュージョンシステムが本格稼働し、複数洞を開ける手術では全例に使用して安全性の向上に努めています。これは自動車のナビのように、どこを手術しているかモニター上に示す機械で、安全性が格段に向上します。消耗品の維持費も高価ですが、当科では安全性を最も重視して全例に使用しています。
・安心全安を追及して ―最新型神経モニター装置の使用-
耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域では耳下腺腫瘍や甲状腺腫瘍のように顔面神経(顔の表情をつくる働き)や反回神経(喉の声帯を動かす)が腫瘍の切除の際に危険にさらされることがあります。そのような場合に神経の状態を確認する最新型モニター装置を常時使用しています。(NIMリスポンス3.0)。これまでも手術では神経を安全に保存してきましたが、より一層安全な手術をうけていただくことができます。
患者さんの安全性を考えて、バセドウ病でも全例で使用しています。
・キイトルーダ(ペンブロリズマブ)、オプジーボ(ニボルマブ)やアービタックス(セツキシマブ)など抗がん剤を臓器温存目的で頭頸部がんに安全に継続して使用しています また特に進行再発例では、免疫チェックポイント阻害薬(免疫治療薬)オプジーボやキイトルーダも使用して治療しています。
頭頸部がん領域では、初めての分子標的治療薬であるアービタックス®の使用が2012年12月に認可されました。このお薬は上皮成長因子受容体(EGFR)を標的にして、それに結合して細胞が増殖する仕組みが働かなくする作用があります。
また免疫系を活性化して進行がんを治療する、オプジーボも進行した頭頚部がんで治療可能となります。2019年12月にはキイトルーダも使用可能になりました。高価なお薬で免疫が活性化することによる副作用もありますが、劇的な効果を示す場合もあり適応のある症例には腫瘍内科と協力して積極的に使用いたします。
・顔面麻痺の起こらない耳下腺腫瘍手術(唾液腺腫瘍のスライドへ)
当科で過去6年間の手術例では78%で術後翌日からまったく顔面神経麻痺をおこしませんでした。また軽い麻痺がおこっても、全例でほぼ完全に回復していました。このように当科では難しいと言われる耳下腺腫瘍の手術を安全にうけていただくことができます。
・取り扱う疾患と科の特色
当科の最大の特徴は、耳鼻咽喉科の病気全般について積極的に取り組んでいることです。高度な治療技術が要求される難聴や悪性腫瘍(頭頸部がん)について、充分な知識と経験を持った医師が責任を持って診療にあたっています。また当院では十分な治療ができないときは、高次医療機関を紹介いたします。
基本的に手術が最適な治療である場合はまずそれをお勧めしますが、最近では保存的な薬物治療など他の治療をうまく組み合わせて最善の結果がでるように努力いたしております。最近の手術実績は以下のとおりです。
|
2017年 |
2018年 |
2019年 |
2020年 |
2021年 |
全身麻酔手術 |
189 |
145 |
150 |
181 |
216 |
局所麻酔手術 |
18 |
23 |
12 |
16 |
20 |
計 |
207 |
168 |
162 |
197 |
236 |
分野別手術数 |
耳科疾患 |
12 |
8 |
11 |
3 |
6 |
鼻・副鼻腔疾患 |
44 |
29 |
28 |
49 |
74 |
口腔咽頭疾患 |
24 |
23 |
29 |
24 |
34 |
喉頭疾患 |
29 |
24 |
13 |
17 |
21 |
頸部良性疾患 |
53 |
49 |
41 |
61 |
56 |
頭頸部悪性腫瘍 |
45 |
35 |
40 |
43 |
45 |
計 |
207 |
168 |
162 |
197 |
236 |
主要術式別手術数 |
副鼻腔内視鏡手術 |
42 |
26 |
25 |
50 |
72 |
扁桃摘出術 |
22 |
23 |
29 |
23 |
33 |
喉頭微細手術 |
29 |
24 |
14 |
17 |
20 |
耳下腺腫瘍摘出術 |
11 |
15 |
10 |
14 |
15 |
頭頸部悪性腫瘍手術
(うち甲状腺) |
45
(35) |
34
(22) |
40
(30) |
43
(35) |
45
(32) |
・耳の疾患
慢性中耳炎
当科では耳の手術は簡単な鼓膜形成術のみ行います。複雑な真珠腫性中耳炎は近隣の大学病院や、専門医療機関に紹介いたします。
・突発性難聴
通常、片方の耳が突然聞こえにくくなる病気です。原因については血行障害説やウイルス説などありますが、はっきりとわからない場合が多いとされています。当科では標準的なステロイド治療をおこなっています。高気圧酸素療法は新規装置で再稼働中です。
・顔面神経麻痺
顔面神経は耳の骨の中を通るので耳鼻科の病気と関連が多く、以前から耳鼻科で多く治療されています。ガイドラインにそって標準的な治療を行います。
・鼻の疾患
慢性副鼻腔ではまず薬物治療による保存的治療を優先して、治らない場合に手術をおすすめしています。宮川医師はこの領域で経験が豊富です。2020年には50例で手術をおこないました。全身麻酔での副鼻腔内視鏡手術はまったく痛みがなく快適に手術を受けていただけます。両側の手術でも1時間余りで入院期間は4泊5日ほどです。
アレルギー性鼻炎ではガイドラインに沿った標準的な薬物治療を中心におこなっております。スギ花粉症やハウスダストによるアレルギー性鼻炎では経口減感作療法(口に目薬のように滴下して体をならす)が可能です。スギ花粉症はシーズン中は治療開始できないのでシーズン2-3か月前に受診をお願いします。また最近ではアレルギーの症状を引き起こすIgE抗体を治療する抗IgE抗体薬(ゾレア®、一般名オマリズマブ)が使用可能になりました。難治性のスギ花粉症で従来のお薬では症状がとれないかたには朗報です。ぜひご相談ください。
鼻症状でお困りの患者さんへ
・ 咽頭の疾患
疲れるとすぐに扁桃(俗に扁桃腺)が腫れて、高い熱の出る場合扁桃を手術でとると、高い発熱なくなり快適な生活をおくれるようになります。また最近ではIg A腎症など腎臓の病気や病巣感染症(掌蹠膿疱症など)を改善する効果があることも知られています。
・喉頭の疾患
当科では声帯ポリープは、まず保存的な治療や発声指導(言語聴覚士による)をうけていただいて改善のない場合に手術を考慮します。最近では外来での入院しない内視鏡下ポリープ切除術も積極的におこなっています。
・頸部良性疾患
当科では頸部にできる良性腫瘍や嚢胞は傷がめだたぬように形成外科的な技術を利用して、将来的に傷跡がほとんど目立たないように配慮して手術しております。
・頭頸部がんと甲状腺がん(頭頸部患者さん2021)
のどや口の周辺(頭蓋底から鎖骨のあいだ)にできるがんを頭頸部がんといいます。当科ではこの領域に経験の深い西村医師が中心となって治療にあたっています。
最近では放射線や抗がん剤をくみあわせた治療が主流ですが根治手術も状況に応じて積極的に行っています。
当科では治療開始時から、治療に伴う苦痛を取り除く緩和ケアも同時に開始しています。エビデンスにもとづいた安心、確実ながん医療を提供いたします。また経過がおもわしくなく再発した場合でも、外来での抗がん剤治療や緩和医療を最期まで提供しつづけます。
最近では甲状腺がん、腫瘍の症例も増加し(2014-2019年で220例、内訳・がん145例、バセドウ病10例、良性腫瘍65例)、神経や副甲状腺機能温存に注意を払って手術しています。また金沢大学核医学診療科や高岡市民病院甲状腺・核医学科と緊密に連携して治療をおこなっています。(ホームページ甲状腺2021)
また最近の実績はこちらです。(甲状腺がん2018-2020まとめ)
医師紹介
西村 俊郎(にしむら としろう)
副院長
診療部長
●専門分野●
頭頸部がん診療
化学療法
再建手術
緩和ケア
●資格●
医学博士
日本耳鼻咽喉科学会専門医(耳鼻咽喉科専門研修指導医)
日本気管食道科学会専門医
頭頸部がん専門医
がん治療認定医
TeamSTEPPSマスタートレーナー
厚労省オンライン診療研修修了
臨床倫理認定士(日本臨床倫理学会)
医療クオリティマネジャー(日本医療機能評価機構)
1986年金沢大卒、1992年金沢大助手、
1995年米国ジョージタウン大学留学、
1997年金沢大講師、
2006年から厚生連高岡病院に勤務
2018年から副院長(医療安全担当)兼務 |
宮川 祐介(みやかわ ゆうすけ)
診療部長待遇
●専門分野●
鼻副鼻腔疾患の手術
頭頚部手術
●資格●
日本耳鼻咽喉科学会専門医
耳鼻咽喉科専門研修指導医 |
山内 静(やまうち しずか)
医員
●専門分野●
耳鼻咽喉科全般
●資格●
耳鼻咽喉科医師(日本耳鼻咽喉科学会) |
施設認定
日本耳鼻咽喉科学会認定研修施設
日本気管食道科学会認定研修施設
(2022年4月改訂)