PET検査を受ける一般の方へ

FDG-PETとは
F-18(放射性フッ素)が目印となるFDG(フルオロデオキシグルコース)というブドウ糖に似た薬を静脈注射すると、活発に活動する細胞に取り込まれてしばらく細胞内にとどまります。
細胞内のF-18の原子核から陽電子(Positron)が放出(Emission)されると陰電子と結合して180度方向に2本の放射線が放出されます。
その2本の放射線の検出を繰り返して体内のブドウ糖分布を画像化(Tomography)する検査がFDG-PETです。
どうやって撮影するのですか?
PETとCTが一体化した装置(PET/CT)が撮像機器として使用されます。ベットの上で約15分間仰向けとなって撮影を行います。
放出された放射線を検出する部分に半導体を利用することによって、飛躍的に検出性能が向上して非常に鮮明な画像を得ることができるようになりました。
さらに短い検査時間で全身の検査を行うことが可能となっています。
呼吸による体動(みぞおち付近の画像のぶれ)を画像処理によって補正することも可能となりました。
どうしてがんがわかるのですか?
がんの病変ではブドウ糖の取り込みが正常組織より3-8倍も多くなっています。FDGを注射すると多くのがんでは強く薬が集まりますので、他の検査ではわからない病変が見つかることがしばしばあります。
がんの正確な広がりを調べて適切な治療を選ぶことが可能となります。再発したがんの部位を探すために、検査を行うこともあります。
また、検査前に気が付いていなかったがんが見つかることもあります。
薬の集まりだけではわからないこともあるため、検査の前には詳しい問診を行います。
これまでの病歴や他の検査結果を参照しながら注意深い読影や総合的な判断を行います。
どんな薬を使うのですか?
ブドウ糖と似た性質を持つ薬を使います。F-18(フッ素)という放射性同位元素が目印としてついているため、薬から放射線が出てきます。
F-18の物理学的半減期(目印の放射能が半分になる時間)は110分です。1時間経つと放射能は3割減少します。長時間保存ができず返品が不可能な高価な薬剤ですので、当日のキャンセルはできる限り避けてください。
薬が集まるのはがんだけですか?
がんだけではありません。がんのほかにも虚血性心疾患、心サルコイドーシス、難治性てんかん、大型血管炎の病態の把握に役立っています。
ブドウ糖代謝がさかんな良性の腫瘍や炎症部位にも集まります。健康な正常な脳、心臓、肝臓、腎臓、腸管、膀胱、卵巣、子宮などにも集積(生理的集積)を示します。
一方、がんのなかでもサイズが小さい・進行が遅い・悪性度が低いおとなしい・低密度のまばらながんでは糖代謝が低くて薬が集まらず、検査をしても見つけられないこともあります。また、生理的集積を示す臓器に生じたがんも見つけにくいといわれています。PET/CT検査は優れた検査ですが、残念ながら万能ではありません。
体内に入った薬はどうなりますか?
薬から出る放射線は時間とともに弱くなり、多くは尿と一緒に体外に排出されますので心配ありません。注射から13時間後には機械で測定しても放射線を検出できない状態となりますが、検査後の半日間は混雑する場所を避けてください。特に妊婦さんや乳幼児・小児との接触を避けてください。
検査後は水分を多めにとって排尿を促しましょう。
被ばくについておしえてください
PET検査での被ばく線量は、一回当たり約3.5mSv(ミリシーベルト)です。Sv(シーベルト)とは、放射線が人間の健康にどれくらい影響があるかを評価するために使う単位です。これは、地球上で人が1年間に自然界から被ばくする2.4mSvの約1.5倍の量ですが、胃のX線検査(約4mSv)と同等かそれ以下です。X線CTを組み込んだPET/CT検査では、X線CTによる被ばく(~5mSv)が加わりますが、この被ばく線量で急性の放射線障害が起こることはありません。
検査のために必要な準備をおしえてください
検査を受ける方は6時間前から飲食禁止(糖分を含まない水・お茶のみ可)を守っていただく必要があります。絶食が守られていない場合は、検査は中止または延期となります。
糖尿病の治療薬も検査の日には内服しないでください。
高血糖や高インスリンといった状態ではブドウ糖の体内の分布が変化して、見つけたい病変がわかりにくくなるためです。
前日および当日の激しい運動は避けてください。
動いた筋肉へ薬が集まりすぎて病気がわかりにくくなるためです。
寒い季節には前日から十分に保温に留意してください。
検査後の半日間は妊娠中の女性や10歳未満の小児との接触時間をなるべく短くしてください。妊娠中あるいは妊娠の可能性がある方の検査は避けてください。
授乳中の方はお知らせください。
心サルコイドーシスの検査を受ける方は、12時間以上の絶食が必要となりますのでご留意ください。
検査の流れをおしえてください
検査に来院されたら、問診・血糖測定・体重測定後に薬剤を静脈注射します。
飲水をしながら1時間待機した後、約15分間あおむけになって撮影をします。
さらに30分待機(体内のF-18を減衰させる)して、追加撮影があれば撮影、ない場合は終了となります。検査時間は約3.5-4.0時間かかります。
排泄に介助が必要な場合は、検査終了時までご家族の付き添いをお願いします。
検査の予定が決まりましたらお渡しするパンフレットをよくお読みになって注意書きを守ってください。