今井みのりさんが優秀賞を受賞

1病棟7階看護師の今井みのりさんが、令和4年度富山県看護協会で行われた「看護の日・看護週間」事業の「看護職員等からの体験談」で優秀賞に選ばれました。
今井さんは、新人看護師として働き始めた頃の患者さんとの関りを、看護ケアを通して表現されました。看護師として成長していく様子がわかる体験談となっています。
この事業は平成20年より始まり、厚生連高岡病院は毎年この事業に参加しています。
100名程の応募のあるなか、毎年のように当院の看護師が受賞しています。
多忙な現場においても受賞に値する看護ができる、そんな仲間をこれからも看護部は応援していきます。
看護部
「ああ気持ちいい」
厚生連高岡病院
今井 みのり
「毛布はこっちの面が上。左足にはかけないで。足先は出してほしいわ」「コップに水を注いで。ペットボトルはそのまま机に置いておいて。ふたは緩めてちょうだい」。病室を訪れるたびに細かいオーダーをする白血病の女性。看護師になって間もない頃、日々の業務を覚えることに必死な私は、女性に言われるままに動くことが精一杯だった。
その女性のもとを訪れて数度目、恥ずかしながら私はやっと、彼女の枕元に散る毛髪が多いことに気づいた。注文の多い彼女がそれを気にしていないはずがないのではと、なんとなく気になった。「髪の毛ね、取っても取ってもすぐ抜けるから、お願いするのはもうやめたのよ」と難しい顔をした彼女は、清掃後、できる限りきれいにしたシーツの上で、「ああ気持ちいい」と笑った。
それからその女性の部屋担当になるたび、枕元をきれいにした。当時の私は、点滴交換も採血もまだ自立していない、今以上に未熟な看護師だった。できることと言えばそれくらいだったのだ。そんな私に、女性は他愛のない会話をしてくれた。ある日、「あなたが今日の担当だとあいさつに来たときが、うれしい瞬間なの。一日、心強いのよ。本当なんだから。また来てちょうだい」とこっそり教えてくれた。胸の奥が熱くなると同時に、申し訳ない気持ちだった。その間にも、女性の容態は徐々に重くなっていく。倦怠感が強い日が多くなり、細かなオーダーも少なくなった。それでも、女性は私の顔を見つけると「また頭、お願いね」とつぶやいた。
しばらくして、女性の担当になることはまれになった。ある時、女性の部屋からナースコールが鳴った。担当看護師に代わって病室に入ると、もうしゃべれない状態だった彼女が、何かを訴えようとしている。言わんとしていることを必死に探ったが、結局、真意をくみ取ることはできなかった。自分の無力さが悔しくて悔しくて、「分かってあげられなくてごめんなさい」と手を握ると、女性は小さく首を横に振って、「あ、た、ま」と口を動かしたように見えた。はっとして、以前と同じように枕元をきれいにする。脱毛はもうほとんど目立たない枕元だったが、清掃後、静かにうなづき私を見つめ、彼女はかすかにほほ笑んだ。
入職して9カ月。少しずつだができることが増えてきた。だが、何もできなかった頃の私を最期まで信頼してくれた人がいたことは、私の支えだ。他の患者さんから「ああ気持ちいい」の声を聞くたび、その大切さを教えてくれたあの女性の笑顔が思い出される。