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厚生連高岡病院

〒933-8555 富山県高岡市永楽町5番10号
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ニュース&トピックス

すこやかワンポイントアドバイス

高齢化社会で問題となる循環器疾患について

2025年問題にもあるように、団塊の世代がもうすぐ75歳以上の後期高齢者となり、日本は世界に類をみない速度で高齢化が進んでいます。現在、日本人の死因の第1位は“癌”ですが、こと85歳以上では、“心臓病”の方が第1位になります。人間は高齢になるとさまざまな心臓血管病が発症しますので、今回は特に重要な2つの病気を紹介します。
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①心房細動(不整脈の一種)
久山町研究(注1)では、80歳以上の5~10%にこの不整脈が生じていることが報告されています。心房収縮がなくなり心臓がバラバラに打つようになって動悸や胸苦、心不全の原因となります。また、心房内に血栓ができやすく、それが流れて脳血管に詰まって大きな脳梗塞を生じます(ミスタープロ野球もこれが原因で脳梗塞に)。これらを予防するために血液抗凝固薬(サラサラ)や抗不整脈薬の服用が必要ですが、重い副作用が生じたり、効果が不十分なこともしばしばあります。そこで当科では、電極カテーテルを心房内の適切な場所にあてがい、高周波電流を流して不整脈の原因を焼灼(注2)する治療(カテーテルアブレーション)を行っています。入院が必要ですが、成功すれば薬物より良い効果が得られます。

 

②心血管動脈硬化症(狭心症・心筋梗塞・下肢閉塞性動脈硬化症)
動脈硬化は、糖尿病・血圧やコレステロールが高い人・喫煙者などで生じやすく、脂質や炎症細胞が動脈内に溜まって、血流を阻害し重要な臓器に障害を起こします。そもそも動脈硬化は血管の老化現象そのものであり、高齢者に頻発します。心臓では狭心症や心筋梗塞になり、足の血管では閉塞性動脈硬化症になります。動脈硬化は薬剤で溶かせないため、心臓や下肢の血流を良くする処置が必要です。当科では心臓血管外科と協力して、バイパス手術やカテーテル治療で血流を改善する治療を積極的に行っています。

 

ヒトは老化により心臓血管病を生じる宿命です。健康寿命を延ばすためにも、心臓検診をしっかり受けて、自覚症状のある方は我慢せず、病院を受診することが大切です。

循環器内科 診療部長
桶家 一恭

 

注1:九州大学大学院医学研究院による、福岡県久山町(人口8,400人)の地域住民を対象に、50年間以上にわたる生活習慣病(脳卒中・虚血性心疾患、悪性腫瘍・認知症など)疫学調査
注2:ショウシャク、焼くこと。特に、病気の組織を電気や薬品で焼いて治療すること。

子どもの発達について シリーズ①「子どもたちの不登校について」

近年、子どもの不登校は増え続けています。かつて登校拒否と言われましたが、行きたいけれど行けない子が圧倒的に多いため、不登校という状況を示す名称で呼ばれるようになりました。文部科学省が2018年2月に公表した調査では、年間30日以上欠席した不登校の子どもは、全国の国公立私立小中学校合わせて13万3683人に上り4年連続で増加しました。kubota-dr不登校の要因は、小学生では「家庭に関わる状況」が53.3%と過半数を超え、「いじめ」は0.7%、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が18.8%でした。中学生になると「家庭」要因は28.9%、「いじめ」0.5%、「いじめを除く友人関係」27.2%となり、学校での人間関係がより大きなウエイトを占めるようになっています。親や大人たちに悩みを打ち明けることができない子どもたちは不登校になる前に、頭痛、腹痛、発熱、朝なかなか起きられない、夜眠れない、人の目が気になるなど体や心の症状を慢性的に訴えます(前駆症状)。親は怠けや意気地なしと叱咤激励し、その程度なら頑張って学校へ行けと背中を押しますが、そのうち症状が変化・悪化して医療機関を受診されます。様々な検査をしても体の異常がないので大丈夫だと太鼓判を押されると、親は「病気でなくてよかった」と誤解し「学校へ行きなさい」ときつく言うようになります。体の病気とは異なる不登校は原因探しをしても無駄です。生まれつきの特性・気質、療育、家族関係(親子関係、夫婦仲など)、学校での人間関係(友達、教師との相性、最近はSNSによるいじめも多い)など様々な要因が絡んでいつの間にか学校へ行けなくなるのです。前述の前駆症状は子どもたちのSOSです。不登校になる前に、疑わしい場合は早めに受診してください。

小児科 診療部長
窪田 博道

子どもの発達について シリーズ② 「発達障害についてーその1」

発達障害は病気ではありません。発達障害者支援法の第2条に、発達障害者とは発達障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などの脳機能障害で、通常低年齢で発現する障害)がある者であって、発達障害及び「社会的障壁により」日常生活または社会生活に制限を受けるもの、と定義されています。最近は、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害はひとくくりに自閉スペクトラム症と呼んでいます。小・中学校の通常の学級において学習面又は行動面において著しい困難を示す児童生徒の割合は、平成24年度6.5%(推定値)で毎年増加しています。
発達障害とは、発達の遅れ、知能の遅れなど、何らかの遅れがある状態ではありません。人との関わり(社会性)がうまく持てないとか、多動や衝動、不注意、知能の遅れという「特性」あるいは「素因」を持っているために、実際の社会生活上で支障や不利益を来している状態を『障害』と呼びます。「特性」を持っていても社会的に困らない人は、支援が必要ないので『障害』と言いません。著名な研究者、有名人、芸能人、こだわりのある料理人・技術者などは皆さんの周りにもいるはずです。
発達障害児とは、変わっている子ではなくみんなとは違う子、困った子ではなく困っている子、付き合うのが難しい子ではなく世の中で生きていくのが大変な子、わからないことをする子ではなく世の中の仕組みがわからない子、言うことを聞かない子ではなく言われたことが理解できない子です。いわゆる「普通」の多数派に混じり苦戦して生きている少数派と言い換えてもいいでしょう。次回のシリーズ③では、発達障害を疑う訴えについて解説します。

小児科 診療部長
窪田 博道

子どもの発達について シリーズ③ 「発達障害についてーその2」

発達障害を疑う訴えには、①言葉が遅れている・・言葉がなかなか出てこない、こちらの言うことがわからない様子、言葉はあるが会話にならない。②落ち着きがない・・幼児期の子どもは落ち着きがないのが自然であり、それが正常か異常か判断するのは難しいものです。多動とは、ちょろちょろ動き回る、高い所に駆け上る、急に道路に飛び出す、迷子になりやすいなど、移動を伴った落ち着きのなさです。過動とは、常にモゾモゾして手足を動かしているような移動を伴わない落ち着きのなさです。③不注意・・忘れ物やなくし物が多い、約束を忘れるなどです。④親の言うことを聞かない・・これは親に反抗している場合と、全く親の呼びかけや指示を聞いている様子がないものに分かれます。いずれも発達障害の特徴ですが、不適切な養育(虐待など)や軽度から中等度の難聴が原因のこともあるため注意が必要です。➄友達と遊べない・・一人遊びはできるが他の子どもを避ける、公園など人のいる所へ行きたがらないなどです。友達が自分の世界を混乱させる不安な存在だと感じる子、嫌われて孤立する子、どちらかと言えば遊んでもらえない子などです。⑥乱暴・・相手に恐怖心を抱き攻撃開始する子、言葉で上手く自分の気持ちを言えない子、躾ができていない子に認めます。➆親から離れにくい・・親の愛情不足または甘やかしすぎでも認めます。園や学校での人間関係、または家庭の家族関係に心配や不安があるかもしれません。⑧偏食がひどい・・食べ物の好き嫌いは誰にもありますが、特定の味や臭いを受けつけません。ヒトの五感(触・聴・視・嗅・味)に偏りを認めることもあります。以上の内容に当てはまり困っておられる方は医療機関を受診してください。

小児科 診療部長
窪田 博道

前立腺肥大症のレーザー手術(内視鏡下) ~高出力レーザー機器を導入~

yotsuyanagi-dr50歳くらいから男性の半分以上で前立腺が大きくなりはじめ、大なり小なりおしっこの出方に問題がでてきます。年のせいとあきらめていませんか?一度大きくなり始めた前立腺の中心部の“こぶ”は個人差はありますが、80歳近くまで大きくなり続けます。『勢いが落ちたなあ』『キレがないなあ』で気が付いてから、さらにゆっくり何年もかけて悪化します。そしてある日、お酒を飲んだり、ある薬を飲んだら急に尿がちょろっとしか出なく苦しくなってパンパンに膨らんだおなかで救急にきて管を入れられる・・・とういうのが寒い季節になると良くある話です。
一旦できた大きな“こぶ”が消えてなくなってしまう薬はありません。薬は一時的に効果があっても、前立腺が大きくなり続ければそのうち効果はなくなります。膀胱は高い無理な圧力でがんばって尿を出しているので、いずれ疲れ果てて変形したり、尿を押し出す収縮力がなくなってしまう場合もあります。
『薬を飲んでもイマイチだけどしょうがない』などとあきらめる必要はありません。内視鏡手術で完治することができます。膀胱にまだ力が残っていたら、若いときのようにドーっと出せるようになります。20代の人とトイレで隣になってもかかる時間に差はなくなります。
手術はこわいとお思いの方も多いと思いますが、私たちの病院では麻酔をかけて、新しいホルミウムレーザーを使った手術法をおこなっているので、従来の方法より完治率が高く、痛み、入院期間、術後のトラブルはかなり少なくすみます。
この手術はエキスパートが非常に少なく、手術を勧められない病院もあるようですが、私たちは患者さんの病状、進行予測をもとに積極的にレーザー手術をお勧めしています。他院では手術の困難な例など県内外の多数の患者さんの手術をおこない、平成28年度のDPC統計では手術件数(レーザー手術+その他の手術)全国第3位となりました。多くの患者さんに『若いときに戻ったようだ』『良くならないといわれていたのに良くなってうれしい』と喜んでいただいています。今後とも北陸地区の患者さんのお役に立てれば光栄です。

泌尿器科 診療部長待遇
四柳 智嗣

先送りしない技術で、糖尿病の中断、放置を防ぎましょう

糖尿病には目や腎臓、足が悪くなる、食事療法が難しいなど、あまり良くないイメージがあります。そのせいか、健康診断で高血糖を指摘されても、病院受診しないまま10年間も放置してしまったり、一度病院に来ても自己判断で何年も治療を中断してしまったりする方がいます。2018shima-dr
糖尿病治療を放置、中断すると失明や腎不全など重篤な合併症を発症しやすくなります。自分の健康が大切なのは当たり前なのに、どうして何年も放置してしまうのでしょうか。診察していると、不安から病気とうまく向き合えず放置してしまった患者さんが多いように感じます。大きな不安があるときは、いろいろと理由をつけて、重要なことを先延ばししてしまいがちです。例えば、お酒をやめると余計ストレスで血糖が高くなるなど、冷静に聞くと少しおかしなことを言って受診を避ける方が多くいらっしゃいます。

 

ここで先延ばししない3つのコツを紹介します。
1.    冷静に論理的な解決をつける(不安に溺れてしまって具体的に行動できない)。
2.    完璧主義をやめる(どうせ完璧に至らない)。
3.    意志が弱い自分を許す(待っていても意志は強くならない)。
先延ばしの原因は、完璧主義と自己否定といわれています。糖尿病について様々な不安をお持ちの方も多いと思いますが、完璧でなくても、意志が弱くても、一歩踏み出せば確実な治療効果が得られます。当科では、医師だけでなく看護師、栄養士などチームで優しく温かく治療に当たりますので、不安なときこそ冷静に考え受診を先延ばしされませんよう、よろしくお願いいたします。

糖尿病・内分泌内科長
島 孝佑

「鏡視下手術の進歩」シリーズ①

近年のテレビやビデオなど映像機器の画質には目をみはるものがありますが、医療の領域にも同じ波が押し寄せています。厚生連高岡病院外科では2016年の手術件数は917件でしたが、このうち508件が体へのダメージが少ない鏡視下手術(モニター画面を見ながら行う小さなキズの手術)でした。1992年に胆嚢摘出術、2003年に大腸癌、2005年には胃癌に対する腹腔鏡手術に着手し、現在では急性虫垂炎や鼠径ヘルニアはもちろん、急性腹膜炎・腸閉塞や肝臓/膵臓/脾臓手術の一部、食道手術(食道裂孔ヘルニア、アカラシア、食道癌の一部)、骨盤内臓全摘術を含む多臓器合併切除など、より難易度の高い術式へ適応を広げつつあります。
これを可能にしているのが手術機器の進歩で、特に画像技術の向上によるところが大きいように思います。最初はSD画質(昔のアナログ程度)のモニターでした。当時はこんなものだと思っていましたが、今になって映像を見直すと昭和のテレビ番組の様な粗さです。その後HD画質(現行のデジタルハイビジョン)になり細部までよく見えるようになったと感激したのも束の間、昨年導入された4Kの鏡視下手術システムは圧巻でした。微細な構造を拡大視することで一層精細な手術ができるようになったと実感しています。
将来は3Dや8Kといったさらなる性能向上に加え、ロボット手術なども徐々に普及してゆくことでしょう。我々外科医の技術も遅れを取らぬようにせねばなりません。当科では消化器外科医の多くが目指す日本内視鏡外科学会の技術認定医(手術ビデオで審査される合格率30%前後の難関、2017年現在で全国に1700人余、富山県に12人)を各グループのチーフを含めて5人が取得しています。今後も先進的な技術導入を怠らずに研鑽を重ね、責務を果たしてゆけるように努めてまいります。

<本シリーズで各臓器/領域ごとの鏡視下手術についてもう少し詳しくご紹介いたします。次回は大腸癌の予定です。>

外科 診療部長
原 拓央
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「鏡視下手術の進歩」シリーズ② 大腸がんにおける腹腔鏡下手術

kotake-dr2018近年、大腸がんの罹患率・死亡率は増加傾向にあり、一般的には開腹手術が行われますが、日本でも四半世紀前より腹腔鏡下手術が導入され増加傾向にあります。腹腔鏡下手術は、おなかの中に二酸化炭素を入れて膨らませ、臍から高性能カメラ(腹腔鏡)を挿入し、おなかの中をモニターに映し出し、5mmの鉗子でリンパ節郭清や大腸切除・吻合を行う手術です。開腹手術では20cm前後の切開創が必要ですが、腹腔鏡下手術では3~5cm程度の切開創で済むため、患者さんにもたらす効果は、切開創の縮小化→手術直後の痛みの軽減→早期離床→排ガス・排便の早期化→早期の食事開始→早期退院・社会復帰となり、「低侵襲手術」と言われています。腹腔鏡下手術の利点は低侵襲性だけではなく、高性能ハイビジョンの腹腔鏡による拡大視効果にて、従来の開腹手術では見えにくかった部位や細かい血管・神経までよく見え、がんの根治性を保ちながら機能を温存する繊細で質の高い手術が可能となります。当院では、昨年更なる安全性と根治性の向上を期待しICG(インドシアニングリーン)蛍光対応4K内視鏡システムが導入されました。ICGを腫瘍近くに注入しリンパの流れを確認することで、より確実なリンパ節郭清が行え、またICGを血管に投与し腸管吻合部の血流を確認することで、術後の合併症を減らせることが期待されます。数年前までは、肛門に近い直腸がんに対しては肛門を残せないとされた症例でも、現在では条件を満たせば肛門温存手術が可能となり、当院では腹腔鏡下での肛門温存手術に積極的に取り組んでいます。当院の大腸がん手術の98%以上に腹腔鏡下手術を行っています。大腸がん治療や腹腔鏡下手術に関してのご相談をいつでもお待ちしております。

消化器外科 診療部長
小竹 優範

「鏡視下手術の進歩」シリーズ③ 胃がんと腹腔鏡手術について

sawada-dr2018近年がんの罹患率、死亡率は上昇傾向ですが胃がんは減少傾向にあります。胃がんの原因は飲酒、喫煙、高塩分、ヘリコバクターピロリ感染等であり、その中でもヘリコバクターピロリの除菌により罹患率が減少しています。また腹腔鏡のみならず内視鏡(胃カメラ)も近年の画質向上により小さな胃がんが発見しやすくなりました。
しかしながら依然として胃がんは日本において高い罹患率、死亡率を占めています。胃がんは早期の段階で治療することができれば完治可能ですが、進行すると周りの臓器に広がって完治が難しくなります。また胃がんの初期段階では症状は全くないため、自分で症状に気がついてから病院に来られた時点では既に癌が進行した状態で見つかることが多いです。近年の高齢化によりいわゆる持病(併存疾患)を持っておられる方が多く手術後も体力の回復に時間がかかることがあります。このような胃がんの患者さんに対して当院では積極的に腹腔鏡手術を行い、手術創の縮小化及び手術後の痛みを減らし早期の体力回復を目指しています。また胃がん手術後は胃の容量が減少して食事の摂取量が安定するまでに時間がかかります。退院してからもしばらく食事に対して不安が残る事もあります。当院では胃がんのみならず5大がん(胃がん、大腸がん、肝臓がん、乳がん、肺がん)に対してかかりつけ医(開業医の先生)と病気について互いに情報を共有しております。これにより様々な症状に対処できるため退院後も安心して療養を行うことができます。このように当院では手術前から手術後まで一貫した治療を行なっております。お若い方から年配の方まで広く胃がんの治療、質問などについていつでもご相談お待ちしております。

外科 医長
澤田 幸一郎

「鏡視下手術の進歩」シリーズ④ 肝胆膵疾患に対する鏡視下手術

大きな病院において、お腹の外科(消化器外科)では、担当する臓器や疾患を細分化することで、より高度で専門的な治療が行われてきています。厚生連でも上部消化管(胃や食道)、下部消化管(大腸や肛門)、肝胆膵(肝臓・胆道・膵臓・脾臓)の3チームを編成して、それぞれが診療に当たっています。katou-dr
全国的に手術件数が増加している腹腔鏡手術は、お腹に数ミリから数センチの小さな孔を数か所あけて、高精細なテレビカメラと精緻な手術用器具を挿入して行う手術です。深部の臓器にカメラで近接することで、お腹の壁の破壊や周辺臓器のダメージを最小限にできるため、患者さんの負担が少なく、術後の回復も早いことが実感できます。肝胆膵外科が扱う臓器は、特に体の奥まった場所に位置するため、開腹手術では病巣に到達するための大きな皮膚切開を要します。そのため肝胆膵領域においても腹腔鏡手術の治療効果は絶大であり、その適応が拡大しています。現在、罹患数が多い胆のう結石では治療の第一選択となっており、また従来は手術が難しく開腹手術となることが多かった急性胆嚢炎(細菌感染をおこして腫れがひどい状態)も、手術器具の進歩や手技の工夫によって、安全に腹腔鏡手術がおこなえるようになっています。その他、肝のう胞などの肝臓良性疾患や、脾臓や膵臓の良性疾患に関しても、腹腔鏡手術が主流となってきました。
一方で、肝胆膵領域の悪性腫瘍(がん)に対する腹腔鏡手術は、病気の悪性度が高いことや、手術手技が難しいことから、導入が遅れていました。肝臓癌に対する腹腔鏡手術は、2010年に肝部分切除が、2016年よりその他の大きな肝切除にも保険適応が拡大されています。また、膵臓癌に対しては2016年より保険適応となりました。ただし、現在はがん手術の安全性と根治性を調べるため、限られた施設での実施や、手術症例の全国登録調査が行われている段階です。手術が必要となった場合には、病気の状態に応じて、適切な治療方法を上手に使い分けることが重要です。

外科 診療部長待遇

加藤 洋介