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ニュース&トピックス

学術コーナー

医療被ばくを減らそう!

(2020.08)

放射線科 堀地 悌

*医療被ばくとは
医療に係わる放射線被ばくの事をいいます。代表的な被ばくにはレントゲン検査、CT検査、核医学検査、IVR(血管撮影)、放射線治療が挙げられます。医療被ばくは検査・治療を受ける患者さんのみでなく、放射線を扱う医療従事者の被ばくも考慮しなければなりません。
昨今、医療被ばくの問題はしばしば大きく取り上げられ、医療被ばくの管理が厳しく問われるようになってきています。当院でも画像診断部が中心となって様々な医療被ばく低減のための取り組みが行われています。

 

*被ばくでおこりうる障害は
放射線被ばくの障害を説明する時には必ず確定的影響と確率的影響と言う言葉が出てきます。
確定的影響はある線量までは障害は起きないが、一定の線量を超えると障害を生じる可能性とその障害の程度が重くなる影響で、放射線皮膚炎や造血機能低下、白内障などが挙げられます。
確率的影響とは癌や白血病の発生、寿命の短縮、遺伝的影響などで被ばくの量に応じて可能性が高くなる障害を言います。この場合、発生した障害の重篤度は受けた線量の多寡とは無関係です。
一部のIVRおよび放射線治療を除き、通常の放射線検査では放射線線量は十分に小さく皮膚障害などの確定的影響の心配はありません。癌や白血病、寿命、遺伝的影響には自然放射線を含めた医療被ばく以外の様々な要因があり、生活習慣や元々の体質・遺伝的素因などの影響も大きく医療被ばくの影響を正確に推し量ることは難しいです。一般には100mSv以下では被ばくによる影響は無いと考えられています。一回のCT検査での実効線量は最大で10数mSv程度までですので通常の放射線診療で確率的影響をそれほど心配する必要はありません。

 

*医療被ばくを減らす必要性は?
レントゲン検査やCT検査を受けて何か放射線障害を受けた患者さんを目の当たりにした方はいるでしょうか?
前の項目で説明したように一般の放射線検査ではその障害をほとんど心配する必要はなさそうです。
また個々の患者さんにとっては放射線検査は健康・命を守るために必要で、通常は検査で得られる利益は起こるかもしれない放射線被ばくの影響をほとんど無視出来るくらいに大きいに違いありません。
ところが2009年にLANCET誌(英・オックスフォード大学の研究)で日本では癌の実に3.2%が医療被ばくによるとの衝撃的な報告が掲載されました。この研究にはいろいろ問題点もありこの数値をそのまま鵜呑みには出来ません。しかしながら個々の患者さんからみた一回の放射線検査の影響は無視しうる程に小さくその検査意義が大きいとしても、社会全体で見た場合には医療被ばくによる人的・経済的な損失も計り知れないものである可能性があります。また寿命などへの影響をほとんど無視しうる高齢者と、これからの長い人生を持ち放射線の感受性の高い小児や若い人とでは当然配慮すべき程度も異なります。

 

*医療被ばくを減らすには
特に画像検査に伴う医療被ばくを減らすには、単純には検査に使用する放射線線量を少なくする、検査部位/撮像範囲を必要最小限にとどめる、検査回数を可能なかぎり減らす事と言えます。
比較的多量の放射線を使用するCT検査や血管撮影装置では装置自体の改善が進み、以前に比較しかなり線量を減らすことが可能となっています。しかしCTでは検査件数は常に右方上がりで、一回での検査範囲や撮像回数も多くなる傾向があり、1人の患者さんが短期に何回も検査を受ける事もまれではありません。
放射線を人体に対して照射する行為は、資格を有する者が医療という正当な理由もって行うので無ければ、傷害罪に問われる様な行為であることを常に認識し、放射線防御の3原則を常に守って行う必要があります。
特に放射線画像診断を行うときには常に正当化と最適化を意識していただきたいと思います。放射線診断あるいは治療は、それによる利益とそれにともなう放射線被ばくのリスクを考え、さらに放射線被ばくをともなわない代替法も考慮し、利益がリスクや損失を上回る場合にのみ行わなければなりません。そして実施にあたっては目的を達成するために必要最小限の被ばくに押さえる事も重要です。ついでの全身撮影、必要性の乏しいダイナミック造影撮影(撮像回数/被ばく線量が増える)、安易な繰り返し検査、検診目的あるいは患者希望のCT検査、これらは大抵は正当化や最適化にそぐわず放射線防御の考えに反する行為です。
非常に有用な画像診断ですが医療被ばくを減らす事も常に意識しつつこれからもご活用いただけると良いと思います。

 

「放射線防御の3原則」
・正当化:放射線に関係する計画された活動が総合的に見て有益であるかどうか、すなわちその活動の導入又は継続が、活動の結果生じる害(放射 線による損害を含む)よりも大きな便益を個人と社会にもたらすかどうかを決定するプロセス。
・最適化:いかなるレベルの防護と安全が、 被ばく及び潜在被ばくの確率と大きさを、経済的・社会的要因を考慮の、上合理的に達成可能な限り低くできるかを決めるプロセス。
・線量限度:個人が受ける、超えてはならない実効線量又は等価線量の値